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憂慮⑤
その頃リビングでは…
「親父、別の病院でも診てもらおう。
セカンドオピニオンは必要だよ。
香川先生だってNOとは言わないよ。
明日紹介状書いてもらって、違う所に行こう。」
「いや、正式な生検結果が出てからにするよ。
ちゃんとしたデータを持っていかなければ、判断のしようがないだろう?
確かにあちこち痛かったんだよ…」
「そんな悠長なこと言ってられるのか?
後二カ月なんだろ?
一日でも早く手を打たないと」
「潤、継。俺はもう覚悟ができてる。
心残りは真澄のことだけだ…真澄を頼む。
お前達には愛する伴侶と子供ができて、もう心配することはない。
二人とも立派に育ってくれてうれしいよ。
家族を大切にな。
それと…これは遺産分割の目録だ。
等分になるように稲葉さんにも相談したんだが、希望があれば二人で話し合いしてくれないか?
…真澄の分はそのままの方がありがたいんだが。」
「親父…そんなことより治療が先だろ?
あんな親父ラブのお袋を置いて、先にあの世に逝っちまう気か?あとが大変だろ?」
「まだ諦めるには早いんじゃないか?
詩音のお腹の中の子も見てもらわなきゃ。
…二カ月なんて…早いよ…」
「俺、香川先生に確認してみる。
普通こんな診断が出たら『ご家族を呼んで下さい』って言われるだろ?
連絡もないし、とにかく時間がないじゃないかっ!」
「あ、香川先生?潤です。その節はお世話になりまして、ありがとうございました。
ええ。はい。
今よろしいですか?
はい、親父のことで。
ええ。今日の検査の結果の…はい。
え?先生、嘘つかないで下さいよっ!
末期の胃癌で余命二カ月なんでしょっ!?
何で家族に知らせてくれないんですか?
時間がないんですよ?そんな呑気な!
はあっ!?」
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