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憂慮⑦
え?じゃあ、俺は…
「先生っ、本当のホントの本当に、俺は大丈夫なんですねっ!?
俺に遠慮して後で家族にだけこっそり告知なんてことないんですよねっ!?」
『慎也さん、クドいよー!
そんなに俺が信用できないなら、他所 紹介しようか?』
「…いや、いいです。
すみません、お騒がせして…」
『いえいえ、すみません。俺も気を付けますよ。
あ、詳しい結果は十日前後で郵送されますから、それ見て下さいね。
では、また。』
「はい、申し訳ありません。ありがとうございました。失礼します。」
はあっ…力が抜けてその場に座り込んだ。
俺、まだ生きることができる!
真澄を…この腕で抱きしめることができる!
…と、冷たい視線に気が付いた。
「親父…何やってんの。」
「こんだけ大騒ぎして“食べ過ぎによるただの胃炎”って…みんな巻き添え食らわして…アホか!」
「そうだ!真澄っ!真澄に知らせなきゃ!」
「今頃三人で大泣きしてるよ、きっと。
どうしてくれるんだよ!右京の涙を返せっ!」
「そうだ!詩音の涙を返せよ!
今、大事な時期なのに、何かあったらどうするだよっ!」
耳に痛い息子達の罵声を無視して、寝室に走って行く。
「まーすーみーーっ!!!」
叫びながら、バーーーン、と寝室のドアを開けると、ベッドの横の床に座り込んで抱き合う三人の嫁達が目に入った。
「うきょーーーっ!!!」
「しおーーーんっ!!!」
俺達の声に、泣き濡れた瞳をゆっくりと上げる嫁達…
「真澄っ!違った!違ったんだ!
俺のことじゃなかったんだよ!
俺はまだ大丈夫だ!真澄っ、ごめん!
俺、病気じゃなかったんだよ!」
「「「…え?」」」
「…パパ…それ、ホント?」
「本当だ!俺の勘違いだったんだ!
真澄、ごめん、右京君、詩音君、ごめんっ!」
潔く嫁達に土下座する。
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