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憂慮⑧

ゆらり 目の前に影がさした。 「…真澄?」 顔を上げ訝しげに名前を呼んだ次の瞬間、胸倉を掴まれた。 ばっちーーーん!!!いったーーーーーっ!!!」 首がもげたかと思った。ムチウチになってはいないか…じんじんと痛む左頬。 頬を押さえながら思わず浮かんだ涙目でゆっくりと顔を正面に戻すと、両目にたっぷりと涙を溜め、口をへの字にした真澄の顔が… うわぁーーーーーんっ!パパぁーーっ!! 思いっ切り抱きつかれ、反動で後ろにひっくり返った。 ごすっ 今度は後頭部か…地味に痛い… 俺の胸でわんわん泣きじゃくる真澄を抱きしめ、俺達を取り囲む息子夫夫達に、片手で拝み口パクで『すまない』と何度も告げ、真澄にもひたすら詫びる。 …気を利かせたのか、四人がこっそりと出て行った。 俺にのし掛かり、細い肩を震わせて号泣する番。 その身体を思い切り抱きしめる。 未だじんじんする頬と、鈍い後頭部の痛み。それに俺に縋る身体の重さと温もり。 あぁ…この愛おしい存在を失わなくて良かった… 「真澄、驚かせて心配させて混乱させてゴメン。」 胸の上で首が左右に振られる。 「うぐっ…ぐっ、ぐっ…パ、パッ…うぐっ」 泣き過ぎて息もまともに吸い込めてない真澄の背中をそっと摩り続けた。 真澄の涙で、胸元がしっとりと湿ってくる。 さっきからどれだけ泣いてるんだ。“涙が枯れる”なんて言葉は、今のお前にはないのかもしれないな。 こんなに…思われて愛されて…俺はお前を残して先に逝けないよ。あの世に逝く時は一緒じゃないと、こんな悲しみを味合わせることなんてできやしない、無理だ。 俺だってお前を看取ることなんて無理だよ。 漸く落ち着いたのか、鼻を啜る音が殆ど聞こえなくなった。 俺は真澄の両脇を掴み上に引き上げると、心を込めてキスをした。

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