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思い合う夜 side:右京④
ゴクリと唾を嚥下する音が、今からの甘い時間のファンファーレに聞こえてしまう。
それでも精一杯の抵抗を…
「潤…優が…」
「口を塞いでやるから気にするな。
ただ、俺を感じろ。」
絶対的αのオーラに圧倒される。
無意識に放たれる何者をも屈服させる威圧感。
それが嫌じゃない。むしろ心地いい、ゾクゾクする。
俺だけに向けられる独占欲に煽られて、身体が火照ってくる。
俺の番の目を真っ直ぐに見つめながら請い願う。
「…じゃあ、全力で感じさせて…」
潤が目を見開いた。
「…明日立てなくなるかもしれないぞ。」
「…優のお世話、よろしく。」
「お前…最高だよ、右京!」
甘くて狂おしい匂いと数え切れない程の真っ赤なハートが、潤から飛び出して、俺に巻き付いてくる。
もうその頃には、俺の思考回路は完全に停止して、ただ目の前の愛おしい番に愛されることしか頭になかった。
覆い被さってくる潤の体重を感じて、胸のドキドキが止まらない。
濃厚な百合の花の匂いが鼻先から退いてくれない。目がチカチカする程の赤いハートは、潤の身体から舞い踊り終わりなく降り注ぐ。
「右京、愛してるよ、お前だけを。」
キス、キス、キス!
唇を合わせながら、その手は俺の身体を弄り、火を付けていく。
「あっ…潤…ああんっ」
塞がれても快楽に後押しされて声が漏れ出る。
猛獣の愛撫に溺れていく。
何処をどう愛したら俺が啼くのか、潤には全てお見通しだ。
「んっ、っ…くうっ…んっ」
声を出しちゃダメ、優が起きちゃうっ。
少しばかり残った理性のカケラが訴えるが、もう歯止めが効かないくらいに、潤を欲しがっている。
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