811 / 829
思い合う夜 side:右京⑦
潤がこめかみや瞼や鼻先にキスを繰り返しながら問い掛けてくる。
「右京…いい?」
「ん?…何が?」
「赤ちゃん、できてもいい?」
「え…」
「中で出しても…いい?」
「…正直…怖いよ。また、まめちゃんみたいになったら…って思うと…」
「あれはあの子の寿命だったんだよ。
まめちゃんはちゃんと挨拶に来てくれたじゃないか。」
「分かってる、分かってるよ…
ねぇ、潤は…二人目ほしいの?それともゴムの違和感が嫌なだけ?」
「そうじゃない。お前と心から愛し合いたいだけ。その結果、子供ができたらなおうれしいんだが。」
どう?と闇に光る瞳が甘えを帯びている。
暗くても分かる、潤が俺を求めるカラー。
意地悪く焦らすように聞いてみる。
「潤…俺のこと…本当に愛してるの?」
「これ以上、どう愛せと言うの?
どう伝えれば右京は納得してくれるの?」
どう返答すればいいのか戸惑い黙ってしまった俺を潤は優しく引き寄せて腕の中に収めてしまった。
「俺のカラー…見えてるんだろ?
それでも信じられない?」
真っ赤な薔薇のような真紅のカラーが俺を優しく包んでいる。
分かってる。信じてる。言わなくてもこれだけ饒舌な色を見せられたら、嫌でも分かる。
でも…
「右京、愛してるよ。」
潤は絶対的αのオーラを出して、俺を落としにかかっている。
「潤…」
「なぁに?」
「…俺の不安な気持ちも分かって。理解して。」
「十分理解してるつもりなんだけど。
右京、俺を愛してくれ…」
ぶわりと鼻孔を擽る、番にしか反応しない匂い。
鼻を肌を侵していく甘い香り。
狡い。潤、狡いよ。
「潤…」
「右京…」
二つの影はやがて一つになった。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!