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エピローグ⑤

安泰の喧しさ。 響く笑い声。 目の前の幸せな光景に、思わず目頭が熱くなる。 少し前の俺には、全く考えられなかった… 「詩音君…」 そっと肩に手を置かれた。 優しくて穏やかな匂い。 「右京さん…」 「見てるだけで微笑ましくて、泣きたくなるくらいにうれしいよね。 詩音君、辛い時期を過ごしてきた俺達Ωへの、きっと神様からのご褒美だよ。 ほら、あっちも見てよ。」 指差す方に視線を動かすと、そこにはお風呂上がりのお義兄さんと優君が、仲良く顔をくっ付けて何やら内緒話をしているようだった。 「俺達は運命の番と出会って結ばれて、ステキな家族ができて、本当にラッキーだったよね。 少し前の俺には、想像と妄想の光景でしかなかったんだけど。 詩音君のお腹にはちび太君が。 …それとね、実は俺も…」 右京さんはそう言って、自分のお腹を愛おしそうに優しくそっと撫でた。 「右京さん!ホント!? やったぁーー!おめでとうございますっ! お義兄さんは? お義父さんやお義母さんは知ってるの?」 「ううん、まだ知らせてない。 さっき分かったばかりだから。 明日、潤に教えてやろうと思ってる。 お義母さん達には、俺達が家に帰ってから報告するよ。」 「そんな大事なことを…お義兄さん達を差し置いて、俺が最初に聞いちゃって良かったんですか?」 「うん。お義母さんがいたら一緒に聞いてもらったんだけど。 詩音君は俺の大切な弟だから、今日のうちに聞いてほしかったんだ。 一人でこのワクワク感を黙っているのは、何だか落ち着かなくて。」 「右京さん…ありがとうございます! まめちゃんも、喜んでくれてますよ!」

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