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エピローグ⑧
甘やかな匂いに包まれたまま、いつもより少し早い時間に目を覚ました。
昨夜 の余韻が残った身体は、綺麗に清められていた。
俺を抱きしめて眠る彫刻のような美しい鼻筋にキスして、その懐からそっと抜け出すと、音を立てないように身繕いをした。
仁もぐっすりと眠っている。
朝食の準備をしに下へ降りて行くと、キッチンに明かりがついていた。
右京さん!?
「右京さん!おはようございます。
俺がするから休んでいて下さい!」
「あ、詩音君、おはよう!
何だか目が冴えちゃって…俺も今来たところだから。」
「でも…」
「いいじゃん、久し振りに一緒に作ろうか!」
「はいっ!」
それぞれに分担して、湯を沸かし具材を切り味噌汁を作り、鮭を焼いて、昨日準備しておいたおひたしを作り、あっという間に出来上がった。
「ふふっ。久し振りだったし楽しかったー!
詩音君、いつも頼って任せっきりでごめんね。
ちび太君が生まれるまでに、早々に俺がバトンタッチするよ。」
「だって右京さん、仕事は?それに赤ちゃんも。きっとつわりだって始まるし。」
「潤との約束なんだ。『子供ができたら仕事は辞める』って。
だから、少々朝起きしてもお昼寝できるから大丈夫!
お義母さんもいるしね!」
パチンとウインクした右京さんからは清々しい匂いがする。
そして、仄かに香る甘えるような優しい匂いは…
「右京さん、赤ちゃん、優しい匂いがします!
甘えてるみたい…」
右京さんはお腹を撫でながら
「そう、ホント!?もう甘えん坊なのか…
あだ名は…詩音君のとこは“ちび太君”だろ?
じゃあ、うちの子は…“こまめちゃん”だな!」
右京さんがうれしそうに笑った。
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