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出会い②

薬を飲んだばかりなのに、身体の奥から熱がぶり返す。ぞくぞくと悪寒のような震えが止まらない。 立っているのもままならず、デスクに手を掛けて何とか倒れるのを防いだ。 自分からも今まで嗅いだことのない甘くて強烈なフェロモンが溢れている。吐く息が荒い。 なんで?薬が効かないことなんてなかったのに? どうして? 『この(ひと)だ』 訳もなくそう思った。 頭の中で警鐘が鳴り響くが、身体がピクリとも動かない。動けない。 怖いような怖くないような、愛おしいような。 拒絶したいような全て自分のものにしたいような…狂おしい… こんな感情も感覚も初めてのことでパニックになっていた。 「…やっと見つけた…」 低音のハスキーボイス。 その声音にぴくりと身体が反応する。 「あ…あっ…あのっ…」 じりじりと無言で近寄る彼は、安安(やすやす)と俺のパーソナルスペースに侵入し、『もう、逃げられない』と震えながら潤んだ瞳で見上げると 「怖がらないで…俺の唯一無二の番…詩音…俺の大切な番。 あぁ….やっと、やっと会えた… 『大丈夫』だから…おいで…」 この人、俺のこと『番』って…『大丈夫』って言った… 瞬間、警戒心が音を立てて崩れていった。 彼はそっと俺を引き寄せて抱き締めると唇を奪った。 「うむっ…んんっ、んっ」 触れた唇から、回された腕から『愛してる』と声なき声が雪崩れ込んできた。 身体中に響く鼓動は俺のものか、彼のものか分からないくらいで。 ちゅくちゅくと粘着質な音が部屋に木霊している。 無理矢理開かされた唇を割って、滑った舌先が縦横無尽に俺の口内を暴れまくる。 歯列をなぞり舌の根元を吸い上げるように舐め尽くされ、上顎をなぞられる頃には、腰が抜けて力が入らなくて、彼に支えられていた。 息が出来ない…苦しい…でも…止めないで… 甘く狂おしい匂いと体温に翻弄され、飲み込みきれない唾液が喉元を流れている。

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