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出会い⑤

全身鍛え抜かれた隆々とした筋肉が美しい。 張りのある胸筋や見事なシックスパックは、まるで彫刻のようで。いくら鍛えてるとはいえ、俺の貧相な身体とは全く違う。 思わずぼぉーっと見惚れていると 「そんなに見るな、照れるから。」 と瞼にキスを落とされた。 身体中にキスの雨を降らせ、恥ずかしさと擽ったさで身を捩って逃げようとする俺を抱え込み離してくれない。 触れ合う素肌が火傷しそうに熱い。 俺は発情期でもこんなに乱れることはなかったし、性的なことには淡白で誰かとこんな関係に、ましてや番に出会えるなんて、夢のまた夢だと思っていた。 家族以外の誰にも愛されずΩとしてひっそりと生きていく、そう思っていた。 なのに、ココロもカラダも目の前のこの男を求めて止まない。 溢れ出るこの想いは何なのか? こんな感情は生まれて初めてで、どうやって向き合えばいいのか戸惑いを隠せない。 そんな俺に 「麻生田 継。『継続』の『継』。 『ケイ』と呼べ。 俺の名前を呼び捨てで呼んでいいのはお前だけだよ、詩音。 お前の全て、俺が貰い受ける。 今日からお前は俺のものだ。 そして、俺はお前のものだ。いいな?」 イエスしか答えのない、拒否権のない一者択一(いっしゃたくいつ)。 この美しい獣にひれ伏した俺は、惑うことなく首を縦に振った。 そして俺達は……

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