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回想①

そろそろ就活のシーズンを迎え、俺みたいなΩを受け入れてくれる好意的な会社をいくつかピックアップした。 もちろん国から推薦される会社も多数あったが、環境の整った条件の良いところを探していたのだ。 条件は三つ。 Ωに理解のあること。これは必須で絶対条件。 未だ頭の固い首脳陣のいるところは根強くΩ排除が成されている。 マンションから歩いて行ける距離であること。 大学入学を機に一人暮らしを始めた俺は、Ωにとって治安のいい安全地帯のこの土地を気に入っている。 下手にバスや電車を使うと、発情期にヤバいことになるから。幾度となくそんな場面に出くわしてトラウマになっていることもある。 あまり表に立って仕事をしなくても…進んで社外の人間と接触しなくてもいい部署の配属が可能であること。 どちらかと言えば、他人のフォローが得意な俺は、事務的な仕事の方が得意だった。 絶対に外したくない条件で振り分けていくと、ある一社に絞られた。 地元でも割と有名で評判もいい。 ここだ!ここに決めた。 ダメ元で受けよう。 教授からは「喜んで推薦するよ。もしダメでも大学の事務局に頼んであげよう。」と後押ししてもらった。 彼もまた…Ωだった。『Ωにしかわからないこともあるから…』とよく気遣ってもらった。

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