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回想⑥
「…そうか…そう見えるんだ。
じゃあ、俺の傷も癒えてきたってことか…」
傷?癒えてきた?兄貴が何かした?
不思議そうな顔の俺に
「…俺さ、正樹と知り合う前…高校生の時に…親友だと思ってた奴らにレイプされたんだ。」
「えっ…」
「そいつら、親友のフリをしてただけだった。最初から俺の身体が目的で。
俺もスーパーΩだから保護されてたんだけど、隙を突かれてさ。
だって、学内で親友にって考えないだろ?
幸いにも薬のお陰で妊娠しなかったけれど…自分のバースを呪ってαに殺意を抱いて産んだ親を憎んで…荒れて荒れてボロボロだった。
何とか入った大学にも行ったり行かなかったり。
自暴自棄になってた時に正樹と出会ったんだ。」
「…そんな大事なこと…黙ってればわからないのに…どうして俺に?」
「詩音君だから聞いて欲しいんだ。
正樹も全部知ってるから…大丈夫。
知った上で…番だからという理由だけじゃなくて俺自身を受け入れて愛してくれてる。」
ふうっと一息ついてコーヒーを飲んだ義弘さんは
「初めて正樹と会った時に、お互い身体中からフェロモンが噴き出して…大変だったんだよ。
あぁ、この人が運命の番だぁ…って。
もう、好きとか愛してるとかそんな次元の問題じゃなくて、本能が追い求めるというのか魂が惹かれるというのか…」
「…姉さん達もそう言ってたよ。」
「そうか…。
だからさ、詩音君。Ωってだけで酷い目に遭ったり暴言吐かれたりするけど、本当はαが大切に愛したいためだけに存在するんじゃないかな…って…正樹と出会って思うようになったんだ。
君は一人で生きていくって思ってるんだろうけど、必ず君の番が待ってるから…
俺みたいな目に遭っても、こうやって愛し合って幸せを噛み締めながら生きていけるんだから…」
辛い過去を曝け出してまで一生懸命想いを伝えようとしてくれてる義弘さん…
俺のことを我が事のように心配してくれる人がいる。
その後は言葉もなく二人で泣いてしまった。
泣きながら食べたケーキは…少し塩っぱかった。
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