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惹かれ合う番①

業務にもやっと慣れてきて少し余裕が出始めた頃、おめでたいニュースが飛び込んできた。 柏木さん…いや、中田さんが無事に出産したのだ。 男の子で…αだそうだ。 中田部長の崩れっぷりは半端なくて、暇さえあれば携帯の待ち受け画面を眺めては 「かわいいでちゅねー。パパも早くお家に帰りたいでちゅ。早退しよっかなー。」 等々独り言を呟いている。すっかりアブナイ人だ。 そんな部長の尻を叩いては、先輩達が慌ただしく連れ出していく。 落ち着いたらお祝いに行こう。 何がいいのかな。選ぶのも楽しいな。 ワクワクしながらパソコンに向かった時、何処からか一際甘い香りがした。 この香り… ずくんと脳髄に衝撃が走った。 え?何これ? 熱とともに、ぶわっとフェロモンが噴き出すのがわかる。 マズい。薬をっ! 慌てて噛み砕く勢いで飲み干した。 よろよろと窓に辿り着き、空気を入れ替える。 発情期?こんなに酷いのは初めてだ。怖い… しばらくすると治まってきた。 歩けるようになり急いで休暇申請を準備する。 取り急ぎメールで、部長に申請の件を送った。 すぐに返信があり、仕事のことは気にしないですぐ早退するようにと指示があった。 申し訳ない気持ちに苛まれながらも、何か過ちを起こす前に対処しなければとその思いの方が強かった。 それにしても、あの香りは…社内の誰とも違う。 とにかく香川先生のとこに行こう… 医務室に向かう途中でも、あちこちで『あの香り』が残っていて、時々フラつきながらもやっとの思いで辿り着いた。

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