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惹かれ合う番④

社内のどこかにいる、俺の…番。 身体がこんなに反応するのは絶対にそうだ。 この香り…どこだ?どこにいる? 早く、早く会ってこの腕に抱きしめたい。 どんな人なんだろう。 警察犬のように香りを辿って社内を走り回る。 でも… 今から担う肩書きが似合う自分になるまで… 待てる?…無理だ… 『仕事も一人前に出来ないくせにそんなことばかりはやるんだな』なんて言われたくないし言わせない。 でも誰かに奪われる前に自分のものにしておかなければ。 後悔してからでは遅い。 医務室に向かう廊下から狂おしい香りが身体に纏わりついてくる。 医務室? そうだ。香川先生! あの人に聞けばわかるかもしれない。 ダッシュして医務室に向かう。 近付くにつれ、段々と匂いが濃くなっていく。 間違いない、ここにいる! あれ?部屋は真っ暗。鍵…掛かってる。 「先生!香川先生っ!!」 ドアをドンドン叩いても静まり返った部屋からは反応がない。 アイドリングの音が聞こえてきた。 あっ、車っ! 廊下の窓から駐車場を見下ろすと、先生の黒いスポーツカーが走り去っていくところだった。 きっと、あの車内に…先生とどういう関係? 先生は『妻命』で、確か…自分の番としか反応しないはず… 俺は一気に脱力してその場に座り込んだ。 見つけた。俺の…俺だけの番。 待ってろ、絶対に俺だけのものにしてみせる。 みんなの望むものとは違う『決意』を胸に、やる気MAXになった俺は立ち上がり、スラックスの埃を払い落とすと胸を張って歩き出した。

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