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もどかしい想い①

あれやこれやとあっという間に就任式を終え、挨拶回りに奔走する。 問い詰めたいのに香川先生は学会のために出張でいない。 『淡雪(あわゆき)の君』(俺が勝手に番のことをこう呼んでいる)には会えない。 あの日以来ぱたっと淡雪のように消え、途絶えたあの香り。 俺はいい加減イライラしていた。 「社長…ご機嫌斜めですがどうされました?」 秘書にも心配される始末。 「あぁ、申し訳ない。何でもないから気にしないで下さい。」 「そうですか…では、明日のスケジュールの確認を…」 こんな気持ちでも物事はどんどん進んでいく。 「篠山さん…」 「はい、何でしょうか。」 「香川先生っていつ戻ってくるの?」 「そうですね…確か来週の金曜日とか仰ってましたが…」 「金曜か…」 悶々と一週間もこんな状態でいなければいけないのか。 何か…何か、探す手掛かりはないのか… あった!個人情報! 「篠山さんっ」 「はっ、はいっ!はぁ…吃驚しました。 どうされましたか?」 「すみません、社員名簿見せてくれませんか?」 「急にどうされたんですか?何か問題でも?」 「…いや、問題はないんだけど(俺には大アリ!) 親父は『ここで働いてくれる社員はみんな家族だ』っていつも言ってたんだ。 住所はもちろん家族構成とか把握してて、人事異動や冠婚葬祭に気を配ってたらしい。 だから、俺も親父に(なら)って少しずつでも勉強していきたいんだ。」 「…………」 「篠山さんっ?」

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