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もどかしい想い②
親父の代から勤めてくれているベテランの秘書がハンカチで目を抑え肩を震わせている。
俺、何か変なこと言ったか?
着任早々やらかしたのか?
「し、篠山さん…俺、何か変なこと言いましたか?」
篠山さんは首を横に振り、鼻をすすると
「何とまぁ殊勝なお心。篠山、頭が下がります。
二代目がこんな立派な方にお成りだとは…
これでうちの会社は安泰です!
すぐ、お待ち致します。少々お待ちを。」
踵を返して社長室を出て行ってしまった。
あー…ごめん、篠山さん。
騙したわけではないんだけど。
邪な理由で…ごめん!
よくもまぁスラスラと口から出まかせが言えたもんだ。我ながら感心する。
とりあえずこれで、Ωの社員がわかるはず。
一歩前進だ。
一人でにやけていると
「社長ー!お待たせしましたっ!さぁ、どうぞ!」
「あ…ありがとう。じゃあ、借りておくよ。
今日の予定はもうなかったよね?適当に帰るから、篠山さんも上がって下さい。お疲れ様でした。」
「承知致しました。それでは明日、よろしくお願い致します。お先に失礼致します。」
先代が聞いたら喜ばれるでしょうなぁ…と大きな独り言を言いながら篠山さんが出て行った。
ドアが閉まるのを待って慌てて名簿を調べていく。
どのくらい時間が経ったのだろう。
三人の未婚のΩのデータを取り出した。Ωの社員は大勢いるが、この三人以外は既婚者だ。
橋下詩音…気になる…ひょっとして彼が?
彼だといいな…いや、彼であってほしい…
俺はその人の写真をじっと見つめていた。
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