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もどかしい想い⑤
「社長…余り根 を詰めるとお身体に触ります!」
篠山さんが心配する程、一週間寝る間を惜しんで必死に仕事に打ち込んだ。
そのお陰で大体の流れや過去と現在の業績、今置かれてる会社の立場も、取引先との関係も全て頭に叩き込んで、今後俺が為すべきビジョンがはっきりと見えてきた。
俺は『絶対的α』と呼ばれる部類で、幼い時から特別なことをしなくても常に何でもトップだった。
だから俺が本気を出せば、会社経営くらいどうってことない…親父は分かっていてさっさと俺にこの会社を明け渡したのだろう。
あの人は昔っからそうだ。
飄々として、強引なくせに愛嬌があって、いつの間にか自分のペースに持ち込んでいく。それでいて憎まれない。トクな人だよな。
それに…直で面接をした親父には分かったのかもしれない。
詩音が…俺の番だと。
「社長。香川先生がお見えです。」
「すぐお通しして下さい!」
「はい、承知致しました。先生、どうぞ。」
「待たせてすまなかったね。お、ちょっと見ない間に随分と精悍な顔付きになって…その分じゃもう立派な社長様だな、継。」
「先生…もう、揶揄わないで下さいよ。
いつまでたっても子供扱いで…いくら小さい時からの付き合いだからといっても…俺、もう25ですよ!?」
「はははっ。すまんすまん。いやぁ、我が息子みたいにうれしくってな。
…ところで、橋下君のことだが…」
「はい。」
俺はしゃんと背筋を伸ばして先生を真っ直ぐに見つめた。
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