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もどかしい想い⑥

「住所、氏名、家族構成…はそこに書いてある通りだ。 彼は…Ωの中でも特別な『スーパーΩ』なんだ。 俺の研究室にも彼のサンプルがある。 普通のΩとは違って、番ったαの能力以上のものを引き出し、必ず純粋なαを生むと言われている。 管理するために、スーパーΩには生まれた時 GPSが埋め込まれるのを知ってるよな?」 俺は黙って頷く。 「特別なΩである故に、月イチで病院に連れて来られ、血液検査やら脳波やら、身体の細部まで調べられて…それでも逃げることもせず文句ひとつ言わずこなしてきたんだ。 並みの精神力じゃない。 αであるご両親も兄姉(きょうだい)も、Ωだからと邪険にせず、愛情を掛けて育ててこられたようだ。 面接の時の内容は…親父さんに直接聞いてみるといい。番関係のことは薄々気付いているから、大丈夫だよ。 内定を受けてしばらくしてからな、付き纏っていたα達に襲われたことがあった。 彼に付いてるSPのお陰で身体は傷ひとつ負わなかったんだが、受けた行為と卑劣な暴言で、今まで少しずつ入ってた心のヒビが大きくなったんだろう、引き篭もった時もあったそうだ。 それでも義兄(あね)達…兄姉の伴侶もΩだそうだ…に支えられ立ち直り、Ωとして一人でもしっかり生きていくと決めた…そういう子だ。 芯の強い、それでいて我慢に我慢を重ねてきた分、弱くて脆い。 番の愛を失えば、儚く消えてしまうだろう。 まだ非公開なんだけど、昨日までの学会でね、改めてΩの存在意義を証明する研究発表があったんだ。 前々から言われてたことなんだけど… αはΩのための存在なんだ。世の中の頂点に立つのは実はΩだったんだ。 αがこの世に存在するためにΩがいる。 αを愛して愛されるための絶対的存在。 Ωがいなくなれば、αもいなくなる。 もっと早くにわかっていれば、認めていれば、この世は変わっていたかもしれない。 継…君の愛で、傷付いた君だけの番を癒してあげてくれ。 あの子を救えるのは君しかいないし、あの子しか君を愛せない。」 一気に話し終えると、香川先生は俺の頭をわしゃわしゃと撫でて微笑んだ。 「よかったな、『魂の番』に出会えて。」

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