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もどかしい想い⑦
香川先生の話を聞きながら、俺は涙が溢れて仕方がなかった。
詩音…俺の番…
Ωのことは話に聞いていたが、そんな大変な思いをして生きてきたなんて。
Ωというだけで生まれてからずっと世の中から理不尽な扱いを受け、希少価値のスーパーΩだからとGPSまで埋め込まれ、モルモットみたいに研究材料にされ…
不埒な輩から面白半分に慰みモノの対象にされる…
絶対許せない。
詩音を傷付けてきた奴らを。
今まで辛く不憫な思いをしてきた以上に、俺が大切に大切に、蕩けるくらいに愛してやる。
あの美しい瞳がうれし涙で濡れるように、抱きしめて離してやらない。
ギリギリと歯を噛み締めて泣き続ける俺に、先生は
「悔しいよな。これが今の世の中なんだ。
でも、今から変わるよ、全てのことが。
継の思いの全てで受け止めて慈しんで愛して。
あの子は無条件で全身全霊で継を受け入れて愛してくれるよ。
幸せになるんだよ、継。」
温かくて優しい先生の声が沁みてくる。
頷きながら、声を押し殺して泣いた。
会いたい…詩音、早く君に会って抱きしめたい…
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