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俺達、結婚します④
詩音が泣いてる!?
何があったのか、慌ててドアを開けベッドに駆け寄った。
「詩音!詩音?どうした?どこか痛むのか?
何か怖い夢でも見たのか?」
詩音は猫のように小さく丸くなり、ふるふると身体を震わせて泣いていた。
俺の声にゆっくりと顔を上げると、ポロリと大粒の涙が頬を伝った。
「詩音…」
どこか悪いわけではなさそうだ。
取り敢えずほっと息をついて、その身体をヨイショと抱え込みぴったりとくっ付いて、零れ落ちる涙を拭き取り、髪を撫で梳 いてやった。
「…いなかったから…」
「ん?」
「…目が覚めたら…継が…いなかったから…
俺はΩだから…やっぱり捨てられたんだと思って…」
小さな声でささやくように呟くと、また泣き出した。
「バカだなぁ…かわいいお前を捨てる訳ないじゃないか。嫌だと言っても離すもんか。
俺の親父と秘書の篠山さんに電話をしてただけだよ。
ほら…もっとこっちに来て…」
ぎゅう っとしがみついてきた詩音を抱きしめ直して、俺はさっきの篠山さんの言葉を思い出していた。
『番になったばかりのΩは心身衰弱してるんですから、目を離さず大切にしてあげないと!』
篠山さん、ホントだよ。
ただでさえ、自己否定の塊みたいな詩音は、目が覚めて俺がいないのに気付き『捨てられた』と勘違いして絶望感に陥ったのだろう。可哀想なことをしてしまった。
香川先生にも言われてたのに。
「詩音…愛してるよ…愛してるから…」
抱きしめたまま、何度も何度も繰り返し声に出して伝え、キスの雨を降らせた。
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