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俺達、結婚します⑧

翌日、用意してあった手土産を持ち、詩音と一緒に家を出た。 そう、行き先は詩音の実家。 昨日のうちに訪問することを伝えてあった。 勿論、用件も。 電話口で、訪問を承諾してくれた詩音の母親は涙声になっていた。 大方、擬似発情期(ヒート)が治まった詩音は、また元のシャイな性格に戻ったように見えたが、時折俺を盗み見る瞳は穏やかで、慈愛に満ちていた。 「さぁ、どうぞ。お待ちしていました。」 詩音とよく似た顔立ちの母親に迎えられ、取り敢えず手土産を渡すと「まあ、ご丁寧にありがとうございます。」と受け取り、にこやかに奥に案内された。 両親と、兄夫夫に姉夫婦。 仲の良さそうな雰囲気が溢れている。 こんな家族の中で育ったのなら、Ωでも詩音はまだ幸せな方だったのではないだろうか。 中には、Ωというだけで、家族からも疎まれることもあると聞いた。 俺は、この人達が大切に思っている詩音の人生を一生預かるのだと思うと、責任と緊張で身震いした。 大きく息を吐くときちんと正座をして 「初めまして。突然の訪問をお許し下さい。 麻生田 継 と申します。 詩音君の会社の…先日就任したばかりですが、代表取締役社長をしております。 事後報告になって大変申し訳ないのですが、詩音君と番の契約をさせていただきました。 つきましては、詩音君との結婚をお許しいただきたく、お願いに参りました。 本来なら私の両親と伺うべきですが、ただ今海外におりまして、来月帰国したら直ぐご挨拶に伺うと申しております。 今日は私一人で申し訳ございません。 もう一つお願いがあるのですが… 詩音君を守るためにも、できれば直ぐにでも籍を入れたいのです。 我儘勝手な言い分なのは、重々承知しております。 どうか、私達の結婚をお許し下さい。」 お願い致します…と畳に擦り付かんばかりに頭を下げた。 隣で聞いていた詩音も小さな声で「お願いします」と俺に倣って頭を下げた。

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