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第1話 (3)
***
結局の所、二人には本当のことは言えず、志津は足早に下駄箱へと向かった。
呼び出すために入れた手紙、言わばラブレターを入れたはずの下駄箱を確認するためだ。
何列にも並ぶ下駄箱の中から、クラスと告白するはずだった彼女の名前を探す。
──亘理雨音 。
見つけた。確かにここに入れたはずだ、と指をさす。
だが、その右隣の下駄箱を見て、志津はその場に崩れ落ちた。そこには、五十嵐総司といかにも男らしい名前が記されていたのだ。
「俺は、こんなにも単純なミスをしてしまったのか!」
恥ずかしさと悲しさで、泣きそうになった。
「しかも、特進クラス・・・」
特進クラスとは、超難解の大学進学を目指すエリートクラス。
「ふふふ、ふはははは!俺はバカか。バカなのか!?頭が悪いのは確かだが、ここまでバカだったのか!」
志津は自分の愚かさに呆れて、笑うしかなかった。
(早く、はっきり言わねーと・・・)
告白をした昼休み。タイミング悪くチャイムが鳴ってしまい、告白相手を間違えたと言えなかったのだ。
会わないようにすればなんとかなるだとうと考えていたが、甘かった。
まさか教室を訪ねて来るとは、思いも寄らないだろう。
なんて日なんだ、と志津は深いため息と共に下駄箱に軽く頭を打ち付けた。
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