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第1話 (4)
***
陽も落ちそうになり、志津はとぼとぼと重い足取りで家に向かう。今日はもう、何も考えたくないと思っていた。
「兄ちゃーん!志津兄ちゃーん!」
小さな公園を横切ろうとすると、フェンス越しに男の子の声が耳に入った。よく聞き慣れた声だ。
「おー!大成 と潤 !」
仲良く手を繋いだ兄弟が走って来る。にんまりと嬉しそうな顔をしていたので、つられて志津は顔が綻んだ。
「兄ちゃんは今帰りー?」
小学校に上がったばかりの大成が聞いてきた。はきはきとした喋り方で目がクリっとしていて可愛い。
その後ろで大成より一つ下の潤が、大成の服の裾を掴んでじっと見つめてくる。大人しい子ではあるが、とても優しくてその仕草が可愛くて仕方がない。
歳が離れているせいもあってか、弟達のことは可愛いとしか言いようがないのだ。
「遅くなってごめんな~」
「お家帰ってご飯作ってー!俺も潤もペコペコだよ」
「そうだな。皆で帰ろうか」
志津を真ん中し、両隣に大成と潤が並んで手を繋いだ。小さな小さな可愛い手。
喧嘩で殴ったりするゴツゴツとした自分の手とは正反対な手だ、と志津は思った。
「兄ちゃん元気ないよ?何かあったの?」
大成は顔を見上げて、大きな目を向ける。潤は志津の手をギュッと強く握りしめ直した。
「兄ちゃん、今日、大切なこと失敗しちゃってさ。情けなくなっちゃって」
小さな子供ほど、ちょっとした変化に敏感だ。隠しても無駄だと思い、正直に言った。
「そっかあ。兄ちゃん、人間には失敗はつきものだよ。失敗を乗り越えてこそ強い人間になれるんだから、次、頑張ろう!」
「た、大成・・・」
一体どこでそんないい言葉を知ったんだと感動しつつ、励まされてちょっぴり元気が出た。
潤は肩に掛けている鞄の中から青く透き通ったガラスの石を取り出した。角張った面もなく、とても滑らかな楕円になっている。
「今日、公園で見つけたんだ。潤、気に入ってたんだけど兄ちゃんが元気出るようにあげるって!」
大成の代弁に、潤は力強く頷いて見せた。
志津は大事に石を受け取り、励ましてくれる弟達に情けない顔を見せられないと笑顔を作る。
「ありがとな、潤。大成も。兄ちゃん元気出た!」
「それでこそ俺たちの兄ちゃんだよ!」
志津は両脇に弟達を抱えて「飛行機だー!」と叫んだ。大成と潤は笑い声を出し、賑やかに三人で家に帰った。
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