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第1話 (5)
***
ご飯を食べてからお風呂に入れて明日の準備を終わらせ、弟達を寝かしつけたらあっという間に二十二時だ。
志津は自分の部屋に入り、ベッドにダイブ。
小さなアパート暮らしだが、高校生にもなると自分の部屋も必要だろうと、一番大きな部屋を与えてくれた。
「今日も疲れたー!」
大きく蹴伸びをする。
勉強は苦手で教科書は学校に置きっぱなしだ。軽々しい通学鞄の中から携帯電話だけを取り出す。
携帯電話のホームボタンを押すと、着歴が十件以上あった。しかも同じ番号だ。
「誰だ・・・・・・?」
登録はしていないものの、この数字には見覚えがある。だが、どこで見たのかまでは思い出せないでいた。
こんなにも着信があると言うことは、何か大事な御用なのかもしれない。もしかしたら、仕事に出ている母親になにかあったのか。
志津は恐る恐る電話番号を発信させた。
「もしもし・・・?」
相手は携帯を手にしていたのか、電話は直ぐに繋がった。
「あ、やっとでた。五十嵐です」
(五十嵐?五十嵐・・・・・・五十嵐・・・・・・五十嵐総司か・・・・・・!)
志津はハッとし、ハンガーに掛けていた制服のポケットの中から、くしゃくしゃに丸め込んだメモ用紙を取り出した。
見覚えがある数字とは、この紙に書かれた番号のことだった。掛けなきゃよかったと後悔するも、志津はふと疑問が浮かぶ。
「なんで俺の番号知ってるんすか」
仮にも先輩だ。妙に敬語を意識してみる。
「君から貰ったラブレター?に番号書いてあったから」
なぜそんな事を聞くのだろう、と総司は思ったかもしれない。楽しそうな低音ボイスが志津の心にグサっと針のように刺さる。
(俺のバカヤロー・・・・・・!!)
その場で答えを受け取る事ができなかった時のために、連絡先も書いていたのだ。そのついでに彼女の連絡先も聞こうと考えていた。だが、それが仇となってしまとは。
「わざわざ教室に来る必要、無かったんじゃないですか」
自分にイライラし始め、ちょっとひねくれた言い方をする。
「ごめん、びっくりさせて。俺が直接教えたかっただけだから」
素直に謝られてしまい、それ以上責める言葉は出てこなかった。志津は折角連絡を取れたんだと思い、告白の訂正をしようと閃いた。
「あのっ、告白の事なんですが・・・!」
「兄ちゃーん!潤がおしっこだって!」
大成の慌ただしい呼び声が、会話を遮った。
潤は夜だけまだ一人でトイレに行けず、志津が付き添ってあげているのだ。
会話が聞こえたのだろう。電話越しに総司の笑い声が聞こえた。
「忙しいみたいだから用件だけ言うね。明日、学校終わったら昇降口で待ってるから。一緒に帰ろう。おやすみ」
「は?え?俺、まだいいって・・・・・・」
言っていない。そう言い切る前に電話は切れてしまった。
「あー・・・・・・!もう!! 」
思うように行かないことに苛立ちを覚えつつも、緊急事態であろう潤の元へと急いだのだった。
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