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第30話

そのまま車に乗り込んだ俺たちは自宅へ向かい始めた。 隣の助手席に乗っている結は車が発進してからずっと今日あったことを1から話してくれているが俺とずっと一緒にいたのだから全て知っていることで・・・俺は相槌を打ちながらもあまり聞いていなかった。 最初はちゃんと聞いていたのだがこうも知っていることばかり話されても退屈してしまう。 結の感想なんかが入っているのならまだ俺も聞いていて楽しいと思う・・・が、 「それで、そのあと、あかとご飯食べました・・・ぱんけえき?、ぼく言えなかった・・・それで、あか、ぱすた食べてた・・・ぼくも一口もらいました・・・そのあと・・・」 ずっとこんな感じだ。 何かの作文?日記?を聞かされているような感覚で、きっと結も今日一日が楽しかったと思ってくれているから話しをしてくれているのは分かっているのだが肝心のその時結が何を思ってくれていたのかが聞けず・・・俺は聞き流してしまっている。 プルルルル・・・ そんな時結の話をさえぎるように携帯が鳴った。 俺は信号で止まったのをいいことに携帯を見ると、中野からの着信だった。 「はい?」 「矢崎か?お前、昨日来ていた子供と一緒か?」 中野は組長と他の幹部、部下の前では丁寧な言葉だが何故だか俺だけには砕けた口調で話しかけてくる。 俺はそんなこと気にしないため何か言ったことは無いが、たまに不思議に思うこともある。 俺は何かした覚えは無いのだが・・・何かしたんだろうか・・・いや、でもこいつは出会った時からこんな感じだったはずだ。 「おい、聞いてんのか?」 「あ、ああ・・・一緒だがどうした?」 「今から連れて来れるか?組長が思った以上に気に入っていてうるさいんだ。」 「なるほどな・・・」 昨日の感じだと結が組長に気に入られているのは一目瞭然だったし帰るときにもまた連れて来いと念押しはされていた。 昨日の今日だとは思っていなかったが・・・ 「今から連れて行くのはいいが、組長仕事は大丈夫なのか?」 あの人もあれはあれで組の長だ、毎日多忙なのをみんな知っている。 「・・・はぁ・・・我侭を言って仕事に手をつけてくれないんだ・・・5分以内に連れて来い。分かったな」 「え、ちょ、おい!」 俺が返事をするのも待たずに切られてしまった携帯を俺は睨みながら結に電話の内容を話し頷いたところで組長の元へ向かい始めた。 5分なんか無理だ、俺は中野の言葉は聞かなかったことにして10分以上かけて向かってやった。

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