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第33話
「楽しかったか?」
やっと帰れると車に乗り込み、俺は隣に座る結に話しかけた。
「楽しかった、おじいちゃん、楽しいお話たくさんしてくれた・・・」
「よかったな、他の奴らはどうだった?」
「みんなやさしかった・・・頭なでてくれた、ぎゅーしていい?きかれた、ぎゅーしていいよって言ったら、暖かかった・・・だっこ、高かった・・・」
「そうか、よかった」
結も結で、怖がっていたものの楽しかったようだ。
「また、来たいか?」
「・・・うん」
結はいいの?と言う目で見てきたので俺は頭を撫でながら、いいよと言ってやった。
結は嬉しそうに頭に乗った俺の手を両手で包んで胸の前に持ってきた。
運転中だが、されるままにしておくと結は嬉しそうに
「でも、あかの手が・・・一番あったかい・・・」
そう言って大切なものを扱うように撫でていた。
結の手の方が暖かいと思うが、結からしたら体温の問題ではないのかもしれない。
「あか・・・おねがい、いい?」
「なんだ?」
「ぼく・・・あかに、ぎゅーしてほしい・・・だっこも・・・」
控えめに言う結にそんなことならいつでもしてやるのに、と思った俺は結の小さなお願いを早く叶えるべく少し車のスピードを上げた。
「そんなことなら、いつだってしてやるから、お前はして欲しくなったら自分から来るくらいにはなれよ」
「・・・いいの?」
「当たり前だ」
「・・・ありがとう」
こんなことでお礼を言う奴なんかいないだろ。
俺はそんな結が可愛く見えて仕方なかった。
あと、家まで5分もかからない。
でも、お願いしてきた結より俺の方が結を抱きしめたくなっていた。
「俺がありがとう、だな」
「・・・?」
聞こえなかったのか首をかしげる結にフッと笑って、着いた家の駐車場に車を停めた。
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