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第34話
家の中に入ると結は玄関で靴も脱がずに恐る恐る抱きついてきた。
俺は靴を脱ぎだしていた為結と同じくらいの高さになっていた。
「どうした?」
「・・・抱きついていい、言った・・・」
「まあ、言ったけどさ・・・」
靴くらい脱がせてくれよ・・・とは空気的に言えない・・・
そんなに甘えたかったんだろうか?本当なら今頃この立ち位置は母親か父親だったのかもしれない。
俺も両親なんていていないようなものだったし、確かに甘えたい時期はあった。
こいつもそんな思いを今抱えているんだろうか・・・
そう思うと俺は無意識に結を抱きしめ返していた。
俺も寂しかった・・・のかもしれない
それが当たり前だった、両親から愛されない、それが俺の常識だった。
拾ってくれた組長は俺を本当の息子のように育ててくれた。だから俺は組長についていくことを決めたし、この人の為に生きていきたいと思えた。
だけど、本当の親から与えられる“愛”がどんなモノなのかを俺は知らない。それがとてつもなく虚しかった。
「結、大丈夫だ。俺がいる。俺が、お前の親になってやる。だからお前は好きなだけ甘えろ」
「・・・うん、うん」
結は俺の肩で泣いていた、肩の部分が結の涙で濡れていく。
俺は抱きしめ返していた結の背中にまわっている手で撫でてやる。
結は安心したように、身体の力を抜いて俺に体重を預けてきた。
お前はただ、普通の子供のように俺に頼ってくれればいい。甘えてくればいい。
俺はそれを全力で受け止めてやる。応えてやる。
だからお前は・・・
「幸せになってくれよ・・・」
「・・・っ、はい、」
俺は聞こえてないと思っていたが、聞こえてしまっていた結は泣きながらも返事をしてくれた。
そのまま俺たちは数十分、そのままの体勢で抱き合っていた。
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