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第35話

「体痛ぇ・・・」 「ごめんなさい・・・」 「いや、いいんだけど」 数十分同じ体勢だったんだ、体が痛くなるのは当然だろう。 俺は脱ぎかけだった靴を脱ぎ立ち上がり伸びをした。 結も靴を脱ぎ家に上がる。 「・・・」 結は俺の服の裾を軽く引っ張り何かを訴えかけていた。 俺は首を傾げるが結は何も言わず俺を見つめるだけ・・・ そろそろ玄関から中に入りたいんだが・・・ 「よし、話は中に入ってからにしよう」 俺は結を抱き上げてリビングに向かおうとした。 「あか、すごい・・・」 「・・・は?」 俺は結の言葉に意味が分からずまた首を傾げる。 「ぼく、あかに、だっこしてほしかった・・・あか分かった、すごい・・・」 何を感激しているのか、結は拍手でもしそうなくらい興奮している。 もう面倒だから連れて行ってしまおうとしただけなんだが・・・ 「そうかそうか、でもな、俺も分かってなかったから、してほしかったら口で言え。俺も困っちゃうからさ」 分かったか?と結に言うと少ししょぼんとしてまた謝ってしまった。 「・・・つぎは、言う・・・」 「おう、そうしてくれ。いつでもしてやるから」 そう言うと結は元気になったのか俺の首に腕を回してきた。 暖かいな・・・ 体温のこともあるが、結とこうして触れ合っていると安心する暖かさがある。 俺はいつかこの暖かさを手放せるんだろうか。 俺はリビングに向かい、ソファーに結を抱っこしたまま腰掛けた。 結は抱きついたままで離れそうにない。 俺も離したくなかった。 「ぼく、あか、だいすき・・・もっと、もっとだいすき・・・」 「・・・ありがとな、そう言ってくれるのは俺も嬉しいよ。俺もお前のこと好きだ」 俺がそう言うと結はなんでか首を振った。 髪が首に擦れてくすぐったい。 「どうした?」 「・・・ちがう、もっともっとだいすき・・・」 「・・・?俺も好きだぞ?」 んーんー、と駄々を捏ねるように結は首元で頭を振り続ける。 どうしたんだ・・・ 俺は結のことが分からなくて困った。 俺は結のことが好きだ。 ちゃんと、こいつが大きくなっていくところを見届けたいと思っている。 たった出会って2,3日だが、俺はもうこいつを自分の子供のように思っていた。 なにが違うんだ?これは好きに入らないってことか? 俺が悩んでいる間も結は首を振ったまま、ぎゅーっと俺の首に回っている腕に段々と力を入れて離さないままだった。

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