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第5話

「紅、結のことはどうするんだ?」 「・・・?」 「まさか、何も考えずに連れてきたのか?」 確かに俺は何も考えずに結を連れてきていた。 結を今後どうするかなんて考えてなかった。 「・・・ここで育てる・・・ことは・・・」 「それは、結くんをこの世界に入れるということか?」 「それは・・・」 できればそれはしたくないと思った。 でも俺にそんな覚悟は無い。 「ぼく、ここに捨てられるの・・・?」 そんな意味で言った訳ではなかった。 ここにはいい奴がたくさんいるし、それに・・・俺が引き取るなんて考えてもなかった。 「捨てるって・・・」 「よし、紅。お前が責任をとって育てろ。結くんを捨てたくはないんだろ?」 「はい。でも・・・」 「言い訳はいい。結くんはお前が育てる。決定事項だ。」 そう組長に言われてしまっては、どうしようもない。 結局俺は組長に逆らうことはできないのだ。 「分かりました。」 でも組長が言ってくれなければきっと俺は言い訳ばかり重ねて逃げていただろう。 俺はそんな奴だ。 「結、お前は俺が引き取る。捨てたりなんてしない。」 「ぼく、あかのところ・・・いても、いいの・・・?」 「ああ、お前は俺のところにいろ」 結は泣きそうに目に涙を溜めながら首を縦にぶんぶん振っていた。 なんで結は俺なんかに懐いているんだろうか。 俺に結から見て何かしてやった覚えはないのに・・・ 「結くんは、そんなに紅が好きか?」 「すき・・・?分からない、けど・・・あかといると、ほかほかして・・・ずっと、一緒に、いてほしい・・・」 「そうかそうか。随分と懐かれたなぁ、紅」 「はぁ・・・」 どんな反応をしていいか分からない。 子供に懐かれたことなんてないし、こんな小さな子供に興味を持つことなんてなかった。 コンコン・・・ 部屋の戸をノックされ、そちらを見ると同じ幹部の中野が立っている。 「組長、仕事が残ってます。やってくださいって何ですかその子供は・・・」 「可愛いだろ?」 「可愛いですが、仕事はしてください」 そう言い、資料だろう紙の束を組長の前に置いた。 「では、失礼します」 中野はそのまま出て行った。 結は中野が怖かったのか硬直している。 まあ、俺も中野にはあまり近づきたくはないしな。 「結、とりあえず一旦帰ろう。組長も仕事があるし、お前は風呂に入らないとな」 そう言うと待ってましたと言わんばかりに組長の膝から抜けこちらに向かってきた。 「あかの、家・・・?」 「そんなに広くはないけどな。」 さっそく俺の脚にしがみつき聞いてきた結にそう答えると、嫌な顔をするどころか嬉しそうな顔をしていた。 「では、俺達も失礼します」 「ああ、また結くん連れて来なさい」 「はい」 バイバイと手を振る組長に結は小さく手を振った。

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