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第6話
車を15分程走らせた場所、俺の家に着いた。
新しくも古くもないアパートの一階の角部屋が俺の家。
「ここが俺の家。こんな所だけどいいのか?」
「うん、うん・・・あかがいれば、いい・・・」
頭を何度も縦に振りながらそんなことを言ってくれる。
結は車を降りた途端脚にしがみついてきた。
それは、きっと俺から離れない為だろうと思う。
俺がいつかは結を捨てると思っているのだろうか。もし、そうなったとき結はこのしがみついた脚を自分から離すのだろうか。それとも、しがみついたまま「捨てないで」と言うのだろうか。
どちらにしても、結は心に大きな傷を残すのだろう。
そんな思いは結にさせたくないと思った。
「歩き辛いな・・・」
そう小さな声で呟くと聞こえてしまったのか、結は寂しそうに手をそっと離した。
「はぁ、分かったよ。今度からこうしよう」
そう言い俺は結を抱き上げた。
あまりの軽さに心配になる。
少しでも力を入れたらどこか折ってしまいそうなくらいに細い。
「え、え・・・」
急に抱き上げた為、結は驚きの声を上げていた。
「怖いか?落としたりしないから安心しろよ」
「・・・これ、すき・・・高い・・・あか、暖かい・・・」
結は次は俺の首にしがみついた。
結は俺が暖かいと言うがこうやって抱きしめていると結の方が暖かい。
このまま抱きしめていたいと思ってしまった。
「ここは寒いから、中に入るか」
「おうち、暖かい・・・?」
「ああ、暖房はついてるはずだから暖かいぞ」
表情をあまり表に出さないと思っていた結が俺に対しては少しだが顔に感情を出してくれる。
何故かは知らないがそれに優越感を覚えてしまいそうになる。
ガチャ・・・
鍵を開け中に入る。
先に結の靴を脱がせて、降ろしてやる。
「ほら、一旦降りてリビング行け」
「一緒・・・行こ・・・」
降ろしたはいいが次は服の端を引っ張ってくる。
「はいはい」
「うん・・・」
返事をした後も服の端は掴んだまま。
俺は靴を脱いで、服の端から結の手を離して結と手を繋ぎ直して暖まっているはずのリビングへ向かう。
リビングはちゃんと暖まっていて寒さで冷えていた体が少しずつ暖まってきた。
「部屋が・・・ほかほか・・・」
「そりゃ、暖房つけてたからな」
そりゃ暖かいわ、と床に胡坐をかいて座った。
それを見て突っ立ていた結が隙間もないくらいにぴったりとくっ付いて座った。
胡坐をかいてる俺に対して結は正座で座っている。
「お前ここ来る?」
「いいの・・・?」
「だめなら言わねーだろ」
そう言うといそいそと移動して俺の胡坐をかいた所に収まる。
やっぱり結は暖かい。
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