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第10話
「よし、食っちゃうか!」
大切な話は沢山したが、そんな事頭の片隅に置いておいてくれればいいだけで、そんなに重い話にしたかった訳ではない。
せっかく結が楽しみながら出来上がるのを見ていてくれたスープも冷めてしまうし、この話は終わりだ。
相変わらず「美味しい、美味しい」と繰り返しながら、こんな手抜きスープを食べてくれる結にしばらくサボっていた料理を本格的に頑張ろうと思った俺は結の頭を撫でた。
ご飯も終わり俺は風呂を沸かしに行った。
分かっていたが結も不安そうについて来ようとしたので、せっかくクッションと毛布で暖まってるので止めた。
湯船に付いてるスイッチを押しお湯が出てくるのを確認してから一旦浴室を出た。
リビングに戻るとまたリビングのドアをずっと見ていた結と目が合った。
「お前、またこっち見て待ってたのか?」
結はコクコク頭を縦に振る。
何しててもいいが、俺がいない間ずっとそうしていても楽しくは無いだろう。
一応何か探してはみたが、子供が楽しめる物などこの家にある訳も無く・・・テレビをつけて行ったがやはり意味は無くこちらを見たまま待っていたらしい。
「結、テレビとかは見てなかったのか?」
「最初は、見てた・・・けど、気になって・・・こっち見てた・・・ごめんなさい」
結はリビングのドアを指で指して言った。
「謝らなくていいけど、ただテレビは好きじゃなかったのかな?って思っただけだ」
「嫌いじゃない・・・猫、可愛い・・・でも、こっちが気になって・・・」
そしてまたドアを指で指す結。
「そうかそうか、悪かったな。今度は一緒に行くから許してな」
「許す・・・?ぼく、怒ってない・・・」
「怒ってなくても相手を悲しくさせたら謝るんだよ。俺は結を悲しくさせた、だから謝ったんだ」
「悲しい・・・ぼく、気になって、あかいないのモヤモヤ・・・怖くなって、涙出そうになった、これ悲しい?」
「思いっきり悲しくなってるだろ。ごめんな・・・本当」
俺は本当に申し訳なくなって結を抱き寄せ頭を撫でた。
俺が結のことを分かってなかった。分かってなさすぎた。あれだけ寂しがらせないようにと思ってたのに・・・
「あか、ぼく、大丈夫」
結が今まで聞いたことない強い口調で言われた。
真剣な声で、俺を安心させるように・・・
「俺が、安心させられてたら意味ないのにな・・・」
結は俺の呟きにハテナを浮かべていたが俺はそれで覚悟が決まった。
俺は絶対に結を幸せにしなきゃいけない、と言う覚悟を決めた。
俺が結に安心させられてるようじゃだめなんだ。
結がいつでも悲しい時、辛い時、楽しい時でさえも安心して結から俺の胸に飛び込んでこれるような俺にならなきゃいけない。
そう決めた。
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