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第11話

「よし、風呂入るか!」 「あかも、一緒?」 「おう!洗ってやるわ」 結は頬を赤く染めて嬉しそうにした。 俺は結を立たせて早足で浴室に向かう。 毛布から出たら寒かったのか結も意外と早足だった。 こいつもこんなに早く動けるのか、と驚いた程だ。 「服脱げー」 「んー」 言いながらTシャツを脱ぎづらそうにしながら首を出せずにいる。 俺は結の頭をTシャツから救出してやり、自分のズボンの裾を上げた。 「あか・・・?」 「ん?なんだ?」 「なんで、脱がないの・・・?」 は?結の一緒に入るとは俺まで入ると言うことだったのか? 俺は少し固まってしまったが、立ち直り服を脱ぎ始めた。 「お前は先入ってろ、ここ寒いから、中暖房入れたし」 「分かった」 結は不安そうな顔をしていたが俺が頭を撫でてやると、中に入っていった。 「すぐ俺も行くし、そこから見えるだろ?」 「うん、見える」 こちらからも見えるように、あっちからも俺がシルエットのように見えてるだろう。 結は俺がいつ入ってくるかと待っているのか、ずっとこっちを見ていた。 「入るぞ?」 そう言いながら俺は浴室のドアを開けた。 結は俺を数秒見た後何故かサッと後ろを向いてしまう。 「結?どうした?」 「な、んでもない・・・です」 明らかに何かあるような言い方に俺はモヤモヤしてしまう。 「結、何かあるなら言えよ」 「え、あ、あの・・・ぼく、あかみたいにかっこいい人、見たことない・・・」 褒められているのか・・・? 全然意味の分からない説明に戸惑ってしまう。 「さっきまでは普通だったじゃねーか」 「えっと、からだ・・・が・・・」 ・・・もしかして、今まで相手してきた奴らと比べられてんのか? なんだか複雑な気分になってしまう。 “ぼく、あかみたいにかっこいい人、見たことない・・・” “からだ・・・が・・・” その言葉で結が今までどんな生活をしてきたか思い出した。 俺も鍛えているしぶよぶよしてはいない。寧ろ引き締まっている。 だが、変な男達に何回も売られてきた結・・・その現実を何だか今更実感した気がした。 「結、」 「なに・・・?」 「お前にはもう嫌な思いはさせねえから・・・」 そのまま後ろを向いていた結を抱きしめた。 服を着ていないと、さっき抱きしめたときより肌が触れ合って結がさっきよりもっと暖かかった。 「あ、あか・・・ぼく、どきどき、変だから・・・は、離して・・・?」 「俺もドキドキしてるよ」 「あかも・・・?」 そうだ、俺もドキドキしてる。結は暖かくて安心するのに心臓がずっとドキドキいつもより早く波打っていておかしい。 今まで感じたことのない気持ちがする。 なんだこれ・・・と結を抱きしめながら脳みそをフル回転させるけど一向に答えは出てこない。 出てこない答えにモヤモヤしながら俺はいつまでも結を抱きしめていた。

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