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第13話
「お風呂、ぽかぽか・・・暖かかった・・・」
確かに結の体は体から湯気が出そうな程ほかほか温かい。
結は浴室から出ても体を拭こうとしないので俺が拭いてやっている。
そんな中で結は暢気にこの台詞だ。余韻に浸っているのかもしれないがちゃんと自分で拭いてほしいのが俺の本音だ。このままでは俺が服を着させてやらなくてはいけないんじゃないかと思うくらい、結は今の状況でも暢気に“お風呂気持ちよかった”を繰り返している。
これではまだ自分の体を拭けていない俺の方が風邪をひいてしまう。
「おい、結風呂なら明日も入れるんだからいい加減自分でやってくれ。俺が風邪ひいちまう」
「・・・あっ、ごめんなさい・・・ぼく、自分でやる。あか、風邪ひいたら大変・・・」
結は一瞬止まってやっと今の状況を理解したようだ。申し訳なさそうにタオルを受け取って自分の体を拭き始めた。
俺はやっと自分の作業に入り、体を拭こうとするが結を拭いていたからかほとんど乾いていた。風呂に入る前に用意した服を着て結を見ると何故か結はまだ体を拭いている。
「まだやってんのか?」
「おしまい・・・?」
「もうおしまいでいいだろ?拭ききってんじゃねーか」
結の腕を触ると拭いている意味がないくらい乾いていた。
「大きすぎるけど無いよりかはマシだから、これ着ろ」
結は俺が差し出したTシャツと買い置きしていて開けていない下着を受け取り着た。
一応ズボンも用意していたがTシャツだけで脚も膝が少し出るくらいまで隠れておりきっと意味が無いだろう・・・と言うことで渡さなかった。
その前に考えてみたがきっと結にズボンを履かせたとしてもウエストが合わず脱げてしまうだろう。
「あかの、においがする・・・」
「そりゃ、着てたんだから当たり前だろ?」
「うん・・・安心する・・・」
結は首もとの襟を鼻に持って行きずっと俺のにおいとやらを嗅いでいる。
何だか恥ずかしくなってしまうが結がそれで安心するなら見逃してやろう・・・
「結、いつまでもここにいたら寒いだろ。そろそろ寝る準備しよう」
結は頷き寝室に向かう俺の後ろを付いて来た。
「悪いがベッドは一人用で狭いんだ。俺は床で寝てるからお前が使ってくれ」
「・・・あか、寒い・・・ぼく、床で寝るからいい・・・」
「いや、お前に風邪引かれたら困るから・・・」
「だめ、ぼくがゆか・・・」
なんでか、一向に譲ってくれない結に意外と頑固な一面があるのを発見したが、結を床に寝せるわけにはいかない。
俺はある程度頑丈だし、朝体が痛くなる程度だが、結が床でなんか寝たら風邪を引くのが目に見えている。
「・・・分かった分かった、一緒に寝よう。」
「あかも、ベッド来る・・・?」
「ああ、それなら文句ないだろ?」
結はそれを聞くとベッドに入って、できる限り端の方で小さくなった。
俺もベッドに入るがそこまで窮屈さは感じない。
「結、もっとこっち来いよ。そんな小さくなってたら寝れないだろ」
「でも、ぼくいるから、あか、狭くなっちゃう・・・」
「意外と狭くないぞ。いいから来い」
そう言うと何を思ったのか結は俺の腕の中に入ってきた。
何でそうなった?と思ったが、結が暖かくて離す気は一瞬で消えてしまった。
「あか、あったかい・・・」
俺たちは温かさに吸い込まれるように眠りについた。
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