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第15話
俺は結リクエストのフレンチトーストを作るべく、キッチンに向かおうとしたが結が昨日貸したでかいTシャツで後ろを付いてくる気配を感じ取って立ち止まり振り返った。
「お前、その格好は寒いだろ・・・毛布持って来い」
「・・・分かった・・・」
結は一旦ベッドに戻り毛布を掴んで待っている俺に走り寄ってきた。
「よし、お前は服が手に入るまで絶対毛布と一緒な」
「分かった・・・」
準備が整った俺たちはリビングに向かった。
結は昨日同様俺の横に付いて俺が料理しているのを見ている。
結はリビングに着くなり毛布を置いてしまったので、俺が回収し今は肩から毛布をかけている。
ギュッと毛布の端を掴んで暖かそうにしているが上半身は暖かくても脚は出ていて、やはり見ている俺の方が寒くなってきそうだ。
「パン、たまご、牛乳・・・」
結は昨日と同じ様に俺が冷蔵庫から出した材料を言っている。
結は知らない食べ物とかあるだろうか。
・・・アボガド、とか今度出してみるか?
「あか、すごい・・・」
難しそうな食べ物を考えている間に俺は卵を割っていたらしい。
結はそれを見て喜んでいた。
「結もやってみるか?」
「・・・いい・・・ぼく、できない・・・」
「最初は誰もできねーよ。大丈夫だ。やってみろ。できなかったら練習すればいいんだ」
結は差し出した卵を恐る恐る手に取り、俺がやっていたようにボウルの淵に卵をコンコンと打ちつけた・・・が、ビビッて力が入っていなかったのかなかなか割れない。
「もう少し力入れてみろ」
「もう少し、もう少し・・・」
結はそう繰り返し卵を何回かまたボウルの淵で叩いた。
すると、少しずつだがヒビが入り割れ始めた。
「結そこまでできたらヒビに指入れて開けてみろ」
「ここ?」
俺が頷くと結はゆっくりと開け始め、ようやく卵が割れた。
「結!できんじゃねーか!」
「できた・・・」
結は信じられないのかボーっと今カラからでできた卵を見ていた。
「結、お前はこれから色んなことができるようになっていくよ。だから、最初からできないなんて言わないでしたいことはやってみろ。お前ならできるから」
そう言って結の頭を撫でた。
昨日シャンプーをしてやったからか、髪のゴワゴワ感が無くなっていつまでも撫でていたくなる様なさらさらした髪になっている。
「ぼくの、やってみたいこと・・・?」
「ああ、すぐに見つけなくていいから。日常の中でだってしたいことは見つかるし、外に出れば結の興味を引くものが沢山あるかもしれない。俺は応援するから何だって挑戦してみろ。な?」
結はコクコク頷いた。
それを見てから俺は結リクエストのフレンチトースト作りを再開する。
とりあえず今日は結と出かけなくてはならない。
今から出かけても早すぎる時間だが結と話をしながらいい感じの時間に家を出ようと頭の中で計画していた。
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