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第19話

デパートの駐車場に着いた。 俺はシートベルトを外し結の方へ体を向ける。 「結、ここで一回待っててくれないか?俺はお前の洋服と靴を調達してくるから」 結は楽しそうだった顔を一瞬で曇らせ俺を心配そうに見てくる。 置いてくのか・・・と俺に言っているようで俺は目を背けたくなる。 でも、ここで背けたら駄目になる気がして俺は目を逸らさないように気合を入れた。 「お前を置いていったりしないよ。ちゃんと戻ってくる。そうだな・・・この時計持っててくれ。このずっと動いてる針が十週するまでには戻ってくるから」 そう言って俺は結に自分の腕時計を差し出した。 ちゃんと握らせてから俺は説明する。結はその腕時計を胸元で大切そうにギュッと握り締めていた。 それじゃ見えねーだろ、なんて思ったがそれで安心するならと俺は何も言わないで車から出て走り出した。 結のために数秒でも早く戻ってやりたかった。 と、言いながらも俺は店に入ったはいいが結に似合う服を決めかねていた。 結は何が似合うだろう・・・と服屋を見ていくがどれも似合いそうでなかなか決められない。 そうして俺は結の好みを聞いてくればよかったと後悔した。 何軒か入っては違う入っては違うを繰り返し、俺が見つけたのはかなり可愛い感じの店。 明らか男物の店ではないが店の外に置いてあったディスプレイのマネキンに着せてある服が絶対に結に似合うと思ってしまった。 「これ、まとめて全部ください」 俺は時間をスマホで確かめ店に入りすぐ近くにいた店員に言った。 店員は驚いたように一瞬動きが止まったがすぐに持ち直し俺の要望に応えてくれた。 「ありがとうございましたー」 店員の元気な挨拶に見送られ店を出る頃には結と約束していた時間まで後三分・・・ 俺は胸を撫で下ろし走って車まで戻った。 最初は悩みすぎて焦ったが思ったより時間が進んでいなくて良かった。多分結はいつもの不安そうな顔で俺を待っているに違いない。俺が本当に捨てたり、置いてどこかに行ってしまってはいないか・・・マイナスな考えで頭をいっぱいにしているはずだ。 早く戻って結を安心させてやりたい・・・そう思ったら俺の頭の中はもう結を安心させてやることしかなかった。 俺が車に戻ると結は緊張していたのか力の入っていた肩から力を抜いた。 やっぱり不安にさせてたよな・・・ 「結、お前に服買ってきたから、それ着たら外出れるぞ。次は俺と一緒に行こう。」 「・・・もう置いてかれない?」 「ああ、本当にごめんな・・・もう置いていかないから・・・」 俺は何だか切なくなって結を抱きしめた。 結は本当の意味で安心したようでようやく体全てから力を抜いて俺に寄りかかってくれた。

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