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第20話

「結、そろそろ行かねーか?」 結を抱きしめたまま多分5、6分は経っている。 このままでも俺は別にいいが、このままここにいるのは限界がある気がする。 他の奴らの目はあるし、結だってこのままここにいても時間が経つばかりで楽しむ時間が減ってしまう。 結はそれでも楽しい、なんて言うかもしれないが俺は結に色んな物を見せてやりたいから・・・ 「うん、ぼく、中入りたい・・・」 俺の問いかけにそう答えてくれた結にホッとする。 「じゃあ、これに着替えてくれるか?その格好じゃ無理があるから」 結に先ほど買ってきた服を袋ごと渡した。 結はそれを何でか恐る恐る受け取る。 「こ、これ・・・ぼくにプレゼント・・・?」 プレゼント・・・とはちょっと違うかもしれないが俺は頷いた。 それより何でこんなにこいつが感動しているのか俺は心配になる。 いつもは溜めても溜めても零れない結の涙が零れた・・・ お、俺は何かしてしまったのか・・・と、俺は柄にもなく焦ってしまう。 「ぼく・・・ぼくぅ・・・ヒッ、プレゼント、もらったの・・・っ、はじめてぇ・・・」 言葉に突っかかりながらも懸命に伝えてくれる。伝わらないと思って伝えようとしてくれる。 そんな結に俺は優しくしてあげたくなってしまう。思いっきり甘やかしてあげたいと思ってしまう。 こんなに相手を大切にしようと思ったことがあっただろうか・・・? 「・・・っ、ありがと、ありがとう・・・っ、うぅ・・・」 まだ泣いている結をまた抱きしめてしまう。 もう周りの奴らなんて気にならなかった。 「結、落ち着いたら開けてくれよ?せっかく俺も必死になって選んだんだからさ・・・」 俺は大泣きしていて聞こえてないだろう結に言った。聞こえてないだろうと思っていたのに結はちゃんといつも通り頷いてくれた。 「あか・・・ぼく、ごめんなさいっ・・・泣くのとまらない・・・っ」 「いいよ、好きなだけ泣け。せっかくお前の泣くところ見れたんだからさ」 俺は結がやっと泣いてくれて安心したんだ。 お前は無意識にいつも我慢するから、俺はこいつは壊れたりしないのかと不安だったんだ。 お前が壊れたりしたら俺はすごく困るのが目に見えている。それはなんでか分からないけどきっとお前がいないと俺まで壊れてしまうだろうから・・・ 昨日と違ってこの答えを求めている俺がいた・・・ 一日で今まで変われなかった奴が変われたんだ。結のおかげで・・・ こいつは俺といて変わることができるんだろうか。俺はこいつを変えてあげることができるのだろうか 結を抱きしめながら俺はそんな事ばかり考えていた。 結が泣き止んだのはそれから10分程経ってからだった。

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