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第21話
俺たちはやっと結を着替えさせて中に入ることができた。
俺が結に絶対似合うと思った服は、かなり子供っぽいと言うかなんと言うかな服だが結は気に入って着てくれた。
下は普通にデニムパンツで上が黒のTシャツ・・・そこまでは普通かもしれないが俺が気に入ったのはそこではなく・・・その上に着るモコモコした暖かそうな白い上着だった。
なんと、フードがあるのだがフードにウサギの耳がついているのだ。
絶対に結に似合うと思って買ったが、着てくれた結を見ると予想以上に似合っている。
結もフードを被ったままウサギの耳を前に垂らしてふわふわ・・・と何回も呟きながら遊んでいる。
人にぶつからないか心配になるが俺が見てるから大丈夫だろう。
「あか、あか・・・ありがとう・・・」
泣きはらした結の目は淵が赤くなっていて本当にウサギみたいだ。
そして何回も俺の袖をクイクイと引っ張り俺が振り向くとお礼を言う・・・というのを繰り返している。
俺は結の手を繋いでやり軽く引っ張りながら歩いている。
こいつの手は小さくて俺の手にすっぽり収まってしまうのに、すごく暖かくて結の手を握っているのだ、と俺に分からせてくれる。
握っていてとても心地よい。
「あか、あか・・・」
「分かってるよ、ありがとうってまた言うんだろ?」
結はコクコク頭を縦に振っている。
なんで分かったの?と純粋な目を向けてくる。
俺は何だか笑ってしまった。
「くくっ、お前は意外と分かりやすいよな」
「あか、初めて笑った・・・」
何でこいつはこんなに感動してんだ?
俺そんなに笑ってなかったか?
「あか、かっこいい・・・」
そう言って次は服の裾を握ってくる結。
結は何か握るのも癖なのかもしれないな・・・
俺が握っている手にも力が入っているさっきまではウサギの耳に夢中で俺が勝手に握っている感じだったのに。
結の手はなんだか余計に暖かくなった気がする。
「周りの奴らは怖いって言うけどな。お前だけだよ、そんな事言う奴」
確かに不細工と言われたことはないが、俺にかっこいいなんて言う奴はいなく怖いと言われるばかりだ。
別にそれで困ったこともないから、自分の容姿を何か思った事はなかったが怖いって言うのは俺が笑わないと言うことも関係していたのだろうか・・・
「まあ、いいか・・・。よし、時間無くてまともなの買って来れなかったからな。お前の靴買いに行くぞ。そんなサンダルじゃ何か変だしな」
10分で帰らねば、一秒でも早く戻らねば、と焦っていた結果俺が買ったのはこの季節には不似合いな夏用のサンダルだった。
こんなのでは可哀想だと思いとりあえず一番最初に目に入った靴屋に入った。
結との初めてのお出かけが始まった。
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