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第22話
一緒に歩いてみると結は車で見ていた通り好奇心旺盛だった。
あっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ・・・見たいところがあったら入るぞ?と言っているのに結は口を開こうとしないから俺は結が何を見て興味を持っているのか分からない・・・
「結ー、見たいところ無いのか?」
そう問いかけるのはこれで何回目だろうか・・・
こう言うと結はキョロキョロするのを止めて俺を見てくる。
なのに次の瞬間にはもうキョロキョロしているから困ってしまう・・・
「靴も買ったしせっかく歩けるんだから、どこか入ろう?な?」
結の靴はゲットしていた。結が履いているのは俺が買ってきた服に合うようにブラウンのブーツだった。最初は歩きやすい物を・・・と俺はスニーカーのところを見ていたのだが合いそうな物が無くその店を出ようとしていた時結が「これ、雨の日に履くの?」と指をさして聞いてきたものだ。
結はポストの件があってからは分からないものは普通に聞いてくれるようになった。
俺はそれを見て「これはブーツで、雨の日には履かないでオシャレする時に履くんだよ」と教えてやった。
この説明が合っているかは俺も分からないが結は店を出ようとしている俺に対してそこをずっと眺めながら付いては来るものの目をそのブーツから離さなかった。
俺は結が一言“欲しい”と言ってくれるのを待っていたが店から出ても結は何も言わず・・・
俺が気になって仕方なくなり戻って買ってしまったのだ。
結の仕草で何を思っているのか大体は予想できるようにはなったのだが、俺は結に言ってほしい・・・
結は主張してくることがないから、俺が気づかなかったらずっと分からないままだ。
きっと結はそれでも言わないだろう。
結には主張することを覚えてほしい・・・そうしないと俺がきっと後から気づいた時に後悔するから・・・
「結、昼は何食べたい?」
「・・・あか、何食べたい?」
「何で質問で返してくるんだよ・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」
結はしょんぼりしてしまうがフードコートに入った途端料理を見回してどれも物珍しそうに見ている結に俺は何が食いたいのか分からなかったから聞いたのだ。
結も俺に気を使ったんだろうが、俺は結が好きなものを言ってくれないと何も決められない。
さっきから通るもの全てに興味津々な結。結だって一つに絞れないのかもしれないが時間をかけてもいいから俺は少しでも結に、結の好きな物、結の興味のあるものを教えてほしい。
「謝るな。俺も言い方悪かったな・・・結はさっきから色んな物を見てるから何が一番気になったか教えてくれるか?別に好きな物じゃなくてもいいから」
「・・・ぼく、あれが一番気に?、なってた・・・」
そうカタコトな言葉と一緒に指をさしたのは、何だか女がたくさん並んでいるパンケーキだった。
「あんなに、ホットケエキが乗ってるの、初めて見た・・・」
何だかホットケーキの発音がおかしかった気がするがとりあえず結の昼ごはんは決まった。
「じゃあ、あれ食うか?」
そう言うと結は“いいの?”とびっくりしたような顔をしていた。
本当にこいつは顔に出やすいな、言ってないのに会話ができそうな気がするくらいだ。
「くくっ・・・じゃあ行くか」
「・・・っ、はい」
結はずっと繋いでいる手に力を入れて俺に付いてきた。
なんだ?と思ったけどああ、こいつは俺の笑った顔が好きなんだっけ?思って一人で納得していた。
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