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第23話
あれから俺は結とパンケーキの店に並んでいるがなかなか列が進まない。
俺は最初イライラしていたが隣で一緒に並んでいる結を見ていたらなんだかどうでも良くなってきていた。
隣で並んでいる結はさっきからうずうずしているのかずっとメニューを見て楽しんだり、列の前の方を小さな体で頑張って見てみたり・・・忙しなく動いている。
表情もメニューを見ながら眉を寄せたり、そうかと思えば口をパクパクしてメニューを読んでみたり・・・
本当に見ていて飽きない。
「食べたい物は決まったか?」
「ま、まだ・・・」
「いいよ、焦んなくて。順番はまだこなさそうだしゆっくり選べよ」
結はコクコク頷いてまたメニューを見ている。
何回も見ているのにこいつは飽きないのか、またメニューの文字を追って口パクで追っているし。
俺は読みはできんのか・・・と思いながらまだ来ねーかな、なんて思って俺も飽きずに結の観察を再開していた。
そんなこんなで後3人・・・くらいになったとき結がやっと何にするか決めたらしい。
「・・・好きなのでいいの?」
「ああ、いいぞ?」
「ぼく、あの、パンケエキチョコ、ソフト・・・がいい・・・」
伸ばす音が苦手なのか結はまたケーキの発音がおかしかったが、言えた結は満足したようにこっちを見ている。
結が選んだのはパンケーキの上にソフトクリームとチョコがかかっているものだった。
「ああ、あれか、分かった。自分で言ってみるか?」
「・・・あ、ぼく、言っていい・・・?」
「いいぞ。言ってみろ」
俺は結の頭を撫でて言った。
結は気持ちよさそうに片目を瞑って受け入れていた。
『次のお客様お待たせいたしましたー!』
忙しそうな店員の声が聞こえて俺は撫でるのを止めて結の背中を押した。
「あ、あの・・・」
『はい、ご注文をどうぞ!』
「えっと、その・・・」
結はいざ店員を目の前にすると緊張してしまったのかモジモジしてしまっている。
俺が結のすぐ後ろで背中を支えていてやっているが、結はなかなか言い出せず俺の方を振り返ってしまった。
「いいのか?・・・すいません。パンケーキチョコソフト一つ」
『はい!以上でよろしいですか?』
「はい」
そうしてお金を払い品物を受け取った俺たちは席を探して空いている席に座った。
「・・・食べないのか?」
フルフル首を振ってフォークを握り締めている結はなかなか食べ始めない。
さっきのことが効いているようだ。
「・・・ごめんなさい」
「あんなこと気にするな。結は頑張っただろ?」
「でも、言えなかった・・・練習したのに・・・ぼく、いつもこう・・・」
俺は気にすることではないと思っているが結はそうではなかったらしい。
それにあの口パクは練習していたのか。
「結は頑張り屋なんだな・・・お前が頑張ってたの見てたよ。お前は頑張ってた。次はできるって信じて次頑張ればいいんだ。頑張り続けていつか成功したらそれで良いんじゃないか?」
「つぎ・・・?ぼくが頑張ったら、つぎがあるの・・・?」
「あるに決まってんだろ?いつだって結が来たいと思ったら連れてきてやるよ。お前が言わなくてもこうやって連れてくる。約束な?だから、お前はちょっとずつでいいから頑張れ。俺だったらいつだって見ててやるから」
そう言って俺はまた結の頭を撫でた。結は頷きながら俺の話を聞いて一滴だけ涙を零した。
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