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2初体験は失敗と共に
やっちまったあああああ、と俺は既に何十回目にもなる叫びを心の中で上げていた。恥ずかしすぎる。数分前の自分をぶん殴ってやりたい。
緊張しすぎた俺は、とんでもないことを口走ってしまったのだ。それに比べれば、声が裏返るくらい何でもない。思い出してまた、死にたくなった。
「――じゃあその、女装してほしいんだ」
気づけば俺は、そう口走っていた。緊張しまくって脳の回線がショートしたとしか思えない。自分で自分の言葉が信じられなかった。
案の定和泉は、は? と聞き返したげな顔をしていた。もしくは、今の話ってそういう流れだったっけ? という。そりゃそうだ。俺でも俺が理解できない。
「あ、えええっと! 服ならあるから! 下着もあるから!」
「……下着もあるの?」
「えっ? あああ違う! 違くて! 俺は一切着てない! 姉ちゃんのものでもなくて! ただちょっと前々から和泉に着てほしい、なぁ、って……」
弁解するつもりがどんどん墓穴を掘っていることに気づき、言葉が尻すぼみになった。アホなのか? 俺はアホなのか? 頭を抱えて逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。
和泉はさすがに固まっていた。そりゃそうだろうな。これはさすがに引かれた。もしかしたら別れを切り出されるかもしれない……そう考えると泣きそうになった。
しかし和泉は、恐々と頷いた。頷いてくれたのだ。こんなアホでキモいお願いなのに。
「わ、渉くん……」
恥じらうような声が背後から聞こえる。着替えてもらっている時、俺はずっと和泉に背中を向けていたのだ。わずかな衣擦れの音にすら反応してしまって、俺の息子は既に臨戦態勢だった。全く役に立たないヘボ息子でもあったが。
俺が意を決して振り向くと――そこにはあり得ないくらい可愛い天使がいた。
それは白セーラーに赤リボン、そして紺のスカートというベーシックなセーラー服だったが、スカートが本当に短い。どれくらいかというと、パンツが見えそうなくらい短い。完璧に俺の趣味だ。見えそうで見えないくらいの短さが好きなのだ。そして紺ソがふくらはぎあたりまでしかない。これも俺の趣味だ。
そんなセーラー服を和泉はどう着こなしていたのかというと――顔を真っ赤にして必死にスカートの裾を手で引っ張って隠していた。そうやって隠されると逆にエロい。食い入るように見てしまう。
「き……着たよ! うぅ、これすっごく恥ずかしい……」
和泉はそう言いながら、床にへたり込んだ。それから俺を、少し怒ったような、そしてどこか期待しているような目で見つめた。俺は欲望を抑えきれず和泉に手を伸ばして――
「し、写真! 撮ってもいいですかっ!」
まただ。また緊張しすぎて、変なことを口走ってしまった。どうやら俺は、本物のアホらしい。案の定和泉は、「へ?」と拍子抜けしたように口を開けた。
俺は和泉から目をそらすように部屋の隅に置いてある一眼レフを持って、少し操作して和泉に向けた。姉ちゃんに何度もコスプレ撮影を頼まれているので、それなりのカメラは持っていた。
ファインダーを覗くと、和泉は眉をひそめて、怒ったように少し口を尖らせて、でも熱っぽい瞳をしていた。もう欲望は爆発しそうで、本当にしたいのはこんなことじゃないのに、俺はシャッターを切った。自分でも全く意味がわからない。
それから俺は、撮る角度を変えて何枚かシャッターを切った。何で俺はこんなことをしているんだろう、と思いながら。そして写真を確認してから、よし、と呟くと、和泉は上目遣いで俺を見た。
「渉くん、終わったなら……」
もちろん、和泉の思っている通りにするつもりだった。和泉に手を伸ばしかけて――また脳の回線がショートした。
「ご、ごめん! もう着替えていいからっ、俺は、気が済んだしそのっ――」
その先を続けられなかったのは、和泉にベッドの上に押し倒されたからだ。しばらく理解ができなくて、呆然と和泉を見つめた。
和泉は怒ったような顔をしていた。それから顔をさらに赤くして、俺にこう言った。
「わっ、渉くん! こ、これで終わりなんて、言わないよね?」
「えっ? ええっと、そのっ……」
口ごもっていると、和泉はあろうことか、俺に跨ったまま自らそのスカートの裾を上げた。
「ぼ、僕……こんなことになっちゃったんだから、責任とって……?」
スカートの中には、すごく卑猥な光景が広がっていた。明らかにサイズ感の合わないレースとリボンのあしらわれた、薄ピンクの下着。そしてそれを窮屈そうに押し上げる陰茎。先走りで濡れているせいで、薄くピンク色が透けてしまっている。
それを、少し震える手でスカートを持ち上げながら見せる和泉は、今まで見たことないくらい恥ずかしそうで、いやらしい顔をしていた。俺は思わずごくりと喉を鳴らした。
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