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3初体験は失敗と共に

「なんか……僕だけが、渉くんと二人っきりの時に、エッチな気持ちになっちゃってるのかって思うと、なんかやだ……」  和泉は耳まで赤くして、口を尖らせて言った。その表情に少し寂しそうな色を見つけて、俺は慌てて弁解した。 「ち、違う! 俺、本当はずーっと和泉とエロいことしたいと思っててっ……思いすぎて、逆に何にもできなかったっていうか……その、本当は……和泉の乳首舐めてーとか、和泉に俺のちんこ突っ込んで汚してーとか、奥にいっぱい精液ぶち込みてーとか、思っ、てて……」  言いながら、はたと気付く。途中で言葉を止めたが、もう手遅れだった。――気持ち悪い。今の俺、最高に気持ち悪い。今なら振られても頷けるくらいに、気持ち悪い。  和泉は、唖然としていた。和泉に土下座したい気持ちでいっぱいになる。散々ヘタレて焦らしたのに、いきなりこんな気持ち悪いことを口走るような彼氏でごめん。  そして和泉はしばらく黙っていた。俺は和泉から一言でも文句を言われれば、すぐさま土下座してしまいそうだった。それくらい居心地が悪くて、申し訳なかった。  しかし和泉は、ぼそりと何かを呟いた。聞き取れなくて聞き返すと「だ、だから!」とまた言った。 「い、……いいよ、して」 「……へ?」 「だ、だからね……僕のこと、渉くんの、好きにして……」  俺から顔をそらして、恥ずかしそうにふるふると震える和泉。――現代の天使はここにいた。かわいい、とかエロい、とかを通り越してむしろ、五体投地をして拝みたくなる。もしも宗教にすがりたくなったら、和泉教を開設しよう。  そんなアホなことを考えながら呆然と和泉を見る俺の顔は、相当間抜けだったんだろう、ちらと視線を合わせた和泉が不安げに「わ、渉くん……?」と尋ねた。 「え、ええっとじゃあ……さ、触っても……いい?」  こくりと頷く和泉。俺は震える手でセーラー服の上から胸に触れた。そのまま恐る恐る滑らせて突起に触れると、和泉は微かに吐息を漏らした。 「うわ……すごい、硬くなってる……」  思わず口から出た。和泉は真っ赤な顔で「い、言わないで……」と呻いた。愛撫の仕方なんて全然わからないので、恐々と撫でたり軽く押したりしてみる。すると俺に跨っている和泉の腰が、僅かにビクビクと震えた。 「き、気持ちいい?」 「うん……」  生唾を飲み込む。直に触ってみたくなった。欲望に従ってセーラー服の裾から手を潜り込ませ、脇腹あたりを撫でる。 「あ……」  和泉が声を漏らす。和泉の肌は熱く火照っていた。  こうやって触ると、全然柔らかくない。むしろかたく引き締まっていて、どんなに可愛く見えても男の腹だと分かる。それからスカートから覗く足も、丸みがなくて直線的な、男の脚だ。  ちゃんと男なんだ、和泉は。幼くて可愛いと思ったことはありこそすれ、女の子みたいに可愛いと思ったことはない。確かに喋り方は可愛い、でもそれなりに低い男の声だ。  そこが、好きだ。抱きしめても女の子みたいに柔らかくなくて、何気ない仕草は普通に男で。うまく言えないけど、男だって部分も可愛くて、愛おしい。決して女の子の代わりじゃない。  だからセーラー服がばっちり似合っているのが可愛いんじゃなくて、やっぱり肩幅とか腰のあたりとか脚とか、ところどころ違和感のある格好が、最高に可愛い。こんなことを言うと、変態っぽくて自分が嫌になるが。  セーラー服の下から突起に触れると、和泉はビクンと肩を震わせた。それから指の腹でくに、と押し潰すように触ってみると、「ん……」と声を上げた。  呼吸が浅くなる。痛くならないようには気をつけながらも、もう少しこねるように触ってみた。 「んっ……渉、くん……ぁ、それ……」 「あっごめん、痛い?」  慌てて手を引っ込めようとしたが、和泉は俺の手を掴んで、ふるふると首を振った。 「ちが、……きもちいい、よ……?」  ドクン、と下半身が脈打ったのが自分でも分かった。我慢できなくなり、俺は勢いよくセーラー服をまくって乳首に舌を這わせた。 「渉くんっ? ちょっと、待っ……うぁっ……ん、っん……ふぅ、ん……」  和泉の声がさっきよりも大きくなった。和泉の顔を見上げると、和泉は口元を押さえながら潤んだ瞳を細めていた。エロい。たまらなくエロい。純粋無垢の権化のような和泉がこんな表情をするなんて。  理性が切れる音がした、気がする。そこからはもう、早かった。

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