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4赤に染めた理由

 ――何が起きているのか全く分からない。元々容量の少ない俺の脳みそは、既に理解することを放棄していた。  俺の言葉で燃えてしまったらしい佑太郎は、さらにやる気を出してしまい、そして気付けば俺は―― 「ちょっ……ガチでムリだから! ムリムリムリ! ちょ、ゆ、佑太郎、待てって……っ!」 「だいじょーぶ、ちゃんと気持ちよくしてやるから」 「ふざけんな……! っゆうたろ、ダメ、ダメだって、あぁ――っ!」  体を仰け反らせた俺を見て佑太郎は、ギラついた瞳で満足気に笑った。 「はぁー……アカ、全部入ったぜ」 「……ダメだって、言ったのに……」  ――気付けば俺は、佑太郎に抱かれてしまっていた。  何でこうなったんだっけ? とそんな状況ながらも考える。確か俺が平太に振られたのを吐いて、佑太郎が「そんなもんセックスして忘れようぜ!」みたいなことを言って、それで拒んでたけれど雰囲気に流されて、それで……思い返してみたが、やっぱりよく分からない。何だこの状況。  悔しいが、佑太郎はセックスがめちゃくちゃ上手い。もともとセックスなんて人並み程度にしか興味がなく、しかも抱かれる方なんて、一度興味本位で自分で弄ってみたが、良さが分からなくてすぐやめたくらいなのに、正直、感じまくってしまった。心底屈辱的だ。  そのテクに加えてこの雰囲気。耳元で囁かれただけで吐息が漏れてしまうほど、壮絶な色気がある。どうなってんだこの男は。同じ年齢のはずなのに、どうしてこうも差が生まれるんだろう……経験の差か。  そんなこんなで流されていたら、こんな最悪の事態に陥ってしまった訳だ。色々な感情が入り混じって、もう何というか泣きたい。童貞の前に処女を失ってしまうなんて。しかも振られた直後、違う男に。俺ほどかわいそうなやつが他にいるだろうか、いやいない。  そんなことをグダグダと、絶望的な気持ちで考えていたのに。佑太郎に耳元で「アカ」と掠れた声で名前を囁かれたら、ゾワリと甘い痺れが走った。だから、お前のその声は反則なんだって。 「は……締まった。耳元で囁かれるの好き? それとも、俺の声が好き?」 「はぁ……っバカ、んな訳あるか……」 「アカ、気持ちいいんだろ? 素直になっちゃおうぜ?」 「……っ、ふざけんな、さっさと抜け……殺すぞお前っ……」 「……分かった」  佑太郎が神妙な顔で頷く。そして言葉通り、ゆっくりと抜いていく。よかった、話がようやく通じたのか。ほっとして体の力を抜いた――が、それもつかの間、 「――っ!」  一瞬、何が起こったのか分からなかった。衝撃が俺を襲う。少ししてからその衝撃が、佑太郎のモノによる強烈な圧迫感と快感によるものだと気付いた。 「……抜くとは言ったけど、その後また入れないとは言ってねぇ」  佑太郎はしたり顔で笑う。そのムカつく笑顔に、怒りしか湧かない。 「こんの……クソ野郎がっ……!」  終わったら絶対ぶっ殺してやる。そんな物騒な決意をしたのもつかの間、それはすぐに揺らいでしまった。  佑太郎は予告もなしに俺に口づけをしてくると、そのまま深いキスをしながら浅くゆるく出し入れをし始めた。さっきまでのぶん殴りにくるような衝撃とは違う、じわじわ嬲ってくるような快感に、俺は身をよじらせたくなった。  セックスが上手いのはずるい。だって拒めない。そのまま快楽に囚われて、身動きが取れなくなってしまう。 「……っはぁ……佑太郎……っ」  俺はおかしくなってしまったのかもしれない。その快感がもっと欲しくなり、キスが終わった後にもねだるように佑太郎を見つめてしまった。  何だかもうどうでもいいや。もっと気持ち良くなりたい。頭の中がどろどろに溶けてしまったかのよう。 「ちょっと待って……やばいやばいこれガチでやばいって……」  一方の佑太郎は、なぜか狼狽えたように頭を抱えた。何が、と尋ねる前に佑太郎は「ごめん」と小さく呟いた。何なんだ、と疑問に思う暇もなく、佑太郎のモノが激しく俺を貫いた。声にならない声が漏れる。  そして息を落ち着けることも叶わないまま、佑太郎は強引な抽送を繰り返した。いきなりすぎて制止しようとするも、その熱くて硬い棒が俺の中のある一点を掠った時、信じられないような気持ち良さが俺を襲い、言葉にならなかった。大げさなくらい体が跳ねる。  それに気付いたのか、佑太郎はそこに当たるように強引に腰を振った。こんな気持ち良さ、俺は知らない。頭がぶっ飛びそう。怖くすらなって、俺は何とか佑太郎を止めようとした。 「ゆうたろ、待っ……あぁァ、ちょっと、っく、止まっ……ん、んっ……止まれ……! 佑太郎! 止まっ、っう、ん……止まれ、って……っ!」  しかし佑太郎は、少し申し訳なさそうな、それでいて今までで一番ギラついた雄の顔で、笑っていた。 「ごめん、ごめんアカっ……マジ止まんねぇっ……はぁっ、意味分かんないくらい、興奮するっ……」 「はぁ!? 何言っ……ん、あぁっ、止まれ、止まれって……! 佑太郎、止ま、ぁんっ……ダメ、ダメだってっもう……!」 「はぁ……っ、何これ、マジでやべぇって……! はっ……もう無理、俺むりっ……なあアカっ……、出していいっ……?」 「っざけんな! ぜってぇやめ……っ、ぁ、あぁっ……! んなことしたら絶対っ、ん、んんっ! やめっ……佑太郎、ゆうたろっ、それダメっ……て、言ってんだろ……っ!」  佑太郎は全然話を聞いてくれない。息を荒げながら、俺のモノにまで手を伸ばして、扱き始めた。やたら亀頭を触ってくる。俺、そこ弱いのに。 「一緒ならいいよな……? 一緒、いっしょにイこうぜ、アカ……」 「ざけんなっ……出したら、っあぁ……出したら、っん、ぶっ殺すっ……!」 「いーじゃん、ゴムつけてるし……なぁ、俺もうイキそうなんだけど……っ」 「っ、だからぁ……! っ、ァ、ダメだっつってんだろ……!」 「んなこと言われてもさ、腰……止まんねぇ」  そう言って見下ろす佑太郎の顔と声は、驚くほどに色気があった。ありもしない雌の部分を強制的に掻き立てるような、そんな佑太郎のせいか、佑太郎のモノで強烈な快感を流し込まれたせいか――トんだ。  何だこれ。めちゃくちゃ気持ちいい。苦しい快感じゃなくて、なんていうか、全部満たされる感じの、幸福感すら感じる快感だ。その感覚に浸っていたい気もするくらい。

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