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10ノンケも目覚めるド天然

「……さっきの、さ。ちょっとびっくりした。明塚君、本当にそういう趣味あるのかと思って」  少し苦い顔で笑う館野。  これは、本当にそういう趣味があるだなんて、絶対に言えない。  後処理は慣れてると言っていたので、見ないように、聞かないようにして館野本人にやってもらった。  ずっと前からレイプされていると、そうなるものなんだろうか。同情を禁じ得ない。  しかし耳を塞いでも正直、声は少し聞こえていた。  館野が漏らす声がエロいな、とは思ってしまったが、それは極力意識の外に出した。  そして今は、下校中。たまたま、館野と帰る方向が同じだったのだ。 「でも、こんなこと言っちゃ駄目だけど、すっごくすかっとしたし、もっとやれって思っちゃった」  更に苦い顔で笑う館野。  ……いちいち前置きする辺り、こいつ、性格良過ぎか。  レイプされてた相手なら、そう思うのが普通だろうに。 「お前は間違ってねえよ」  そう言うと、館野は「なら良かった」と安堵したような表情になった。 「それはそうと……明塚君、第一印象と全然違うよね、性格とか話し方とか」  そう言われて自分の言動を思い出し、思わず顔が歪んだ。ボロが出たか。  俺の顔を見て、「あれ、言っちゃまずかった?」と館野は慌て出した。 「ああいや、えっと……俺さ、高校デビューしたんだよね。よく言われる意味とは逆の意味で」 「……つまり?」  首を傾げる館野に、俺が中学生の頃の写真を見せてやった。 「……この人がどうかした?」  訝るような表情の館野に、俺はこう告げた。 「これ、俺」 「……嘘っ!?」  館野は素っ頓狂な声を上げた。 「だ、だってこの人、眼鏡してないし……」 「これ伊達だから。わざとしてんの。してた方が地味で大人しそうに見えんだろ? 前髪長めなのも地味に見せるためだし」  そう言うと、館野は納得のいかなそうな顔で首を傾げた。 「わざと地味に見せる必要、ないと思うけどなぁ。かっこいいのに」  こういうことを何のてらいもなく言うから、襲おうなんて馬鹿が現れるんじゃなかろうか。  俺は騙されない。こいつはきっと、ただの天然だ。 「俺さ、目立ちたくないから」  俺はそう答えた。

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