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2やっぱり誤魔化せない

「終わったぁー。真空、今回の数学難しくなかった?」 「そうか? むしろ簡単に感じたが」  すると伊織は、口を尖らせた。 「そりゃあね、真空は数学が得意だからそう言えるんだよぉ」  その後伊織は、にこにこしながら俺に顔を近づけた。 「ね、じゃあさ、テスト終わったからーー」  ちょうどその時、ブーッと携帯のバイブが鳴った。  何だと思って見ると、電話が来ていた。その宛先がーー  ーー平太だった。 「……すまん、ちょっと電話に出てくる!」  俺はそう言い残して、教室の外に駆けた。  もう全部どうでもいい。平太から連絡が来た、そのことだけが何よりも嬉しかった。 『……もしもし、先輩?』  電話をとると、平太の声が聞こえた。二週間ほどしか経っていないはずなのに、とても懐かしく思えた。 「へーー明塚、どうした」  平太、と呼びそうになるのを何とか抑えた。……それは、二人の時だけの約束だった。 『あの、今日暇ですか? 先輩、テスト勉強で忙しいだろうし、テスト終わるまでは連絡しないでおこうと思ってたんですけど』  平太はそう、何でもないことのように言った。  ……今まで連絡が一切なかったのはそのせいか。てっきり、もう館野を選んだのだとばかり。  嬉しさとほっとしたのが入り混じって、涙が浮かびそうになる。 『寂しかったですか?』  冗談めかして平太は問いかけた。  変な気を回さないで連絡してくれればよかったのに、という不満から俺はこう答えた。 「……寂しかった」  自分の声が少し拗ねているように聞こえて驚いた。  すると、平太は電話の向こうでしばらく黙った。  少し不安になって「どうした」と聞くと、ぼそっと平太は答えた。 『……反則ですよ、先輩』  何が、と聞こうと思ったがそれよりも先に、話を逸らすように平太は問いかけた。 『で、暇ですか?』  一瞬、伊織の言っていたことが浮かぶ。が、それは天秤にかけるまでもなかった。 「暇だ」 『ならよかった。じゃ、校門の近くで待ってるんで』  そして、ふと思い出したように平太は付け加えた。 『俺も寂しかったですよ』  その後ふっと笑う気配がし、ぷつっと電話が切れた。  ーー今のはずるい。でも、すごく嬉しかった。  顔がにやけるのが抑えられなかった。 「……あ、戻ってきた。でさーー」 「すまん、用事を思い出した!」  ろくに話も聞かず、俺は荷物を引っ掴んで教室の外に飛び出した。  頭の中はもう、平太のことでいっぱいだった。  だから、だろうか。 「……ふーん。用事、ねぇ」  伊織の底冷えする声に、気が付かなかったのは。

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