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3やっぱり誤魔化せない
「真空さん!」
平太は俺に気がつくと、嬉しそうに笑った。そして、自然な流れで俺の手を握って引っ張った。
突然のことで言葉が出なかったが、顔がにやけるのは抑えられなかった。
「あれ?」
手を引っ張られて少しして、いつもと違うことに気がつく。
「平太、俺の家はこっちじゃないんだが……」
平太は平然として答えた。
「知ってますよ。この方向は俺の家です」
「……えっ?」
思わず聞き返すと、平太は首を傾げた。
「どうしました?」
「いやだって、今まで一度も家に呼ぼうとも……」
すると平太は「ああ」と納得したように相槌を打った。
「そりゃ、兄貴に知れたら四六時中からかわれますし。兄貴にだけは死んでもバレたくないんですよ」
「……そういう理由だったのか」
今まで家に呼ばれなかったのが少しだけ嫌だったので、嬉しくなる。
「今日はいいのか?」
聞くと、平太は頷いた。
「はい。今日は合コンって言ってたんで、家には帰ってきませんよ。朝帰りだろうし」
話を聞いている限りでは、平太のお兄さんは相当な遊び人のようだ。できれば、会いたくない人種だ。
「早く行きましょ。俺我慢してるんですよ、これでも」
「我慢、って何を?」
分からずに聞くと、表情を変えずに平太は言った。
「決まってるじゃないですか」
そして手をぐいっと引っ張り、俺の耳元で低く囁いた。
「今、すげえ真空さんのこと犯したくて堪らないんです」
その言葉で、どっと心拍数が上がり、一気に顔が熱くなった。
「あは、顔真っ赤ですよ真空さん」
面白げに笑う平太。
「だって、平太がそんなこと言うから……」
もごもごと言うと、平太は楽しげに言った。
「そんなこと言うから、恥ずかしくなりました? それとも」
平太はくすりと冷笑すると、嬲るような声音で言った。
「興奮しました?」
久しぶりに聞く平太のSっ気たっぷりの声に、思わず興奮した。
ああまずい、家にまだ着かないのにもう勃ってきた。
「俺、色々やりたいことがあるんですよ。でもそうだな……まず手始めに」
平太は嗜虐心の見え隠れする笑顔を浮かべた。
「今まであんまり開発してこなかったトコロ、たっぷり開発してあげます」
ゾクンと快感が走る。……ああもう、我慢できなくなってきた。
平太は俺を見て、楽しげな笑顔を見せ、囁いた。
「真空さん、勃ってます」
驚いて下を見ると――確かにしっかり大きくなっていた。慌てて隠すと、平太は嗜虐的な視線を俺に向けた。
「しっかり分かるくらい勃たせちゃって、そんなに俺に犯されたいですか?」
冷笑混じりのそんな声にも、感じてしまう。俺はこくりと頷いた。
しかし、平太は容赦しない。
「口で言って下さい。分かりませんよ?」
羞恥心を乗り越えて、俺は何とか聞こえるくらいの音量で言った。
「お……犯されたい、です。我慢、できないっ……」
平太はそれを聞き、満足そうに笑んだ。
「……自分からおねだりしたんですから、腰が立たなくなっても文句は言えませんよね?」
そう言うと、平太は手を引く速度を上げて歩いた。
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