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4やっぱり誤魔化せない

「お、お邪魔します」  多少緊張しつつ入ると、平太は苦笑した。 「そんな緊張するような場所じゃないですよ、汚いし」  平太のその言葉は半分謙遜、半分事実だった。  いうなれば、綺麗か汚いかで言ったら綺麗、すごく綺麗かそこそこ綺麗かで言ったらそこそこ綺麗、となるだろう。 「それはいいとして、真空さん」  平太は鍵をしっかりと閉めてから、俺に向き直って微笑んだ。 「俺、勃っちゃったんですよ。だからフェラして下さい」 「え? ああ、分かったが……」  家に入ったばかりの今言うことだろうか、と思った。  が、今言わなければいけない理由はすぐ後に分かった。 「ここで」  平太は相変わらず微笑んだまま。 「えっ? でも、ここだと外に声が……」 「それがどうかしました?」  平太が微笑みを、否、にやにやとした笑いを浮かべているのを見て、意図を悟った。  ――わざとだ。わざと、外に声が聞こえるかもしれないここでさせたいんだ。 「早く」  有無を言わせぬ平太の様子に、被虐心が煽られる。  平太の前に跪いて、おずおずとズボンを下ろし、咥えた。  徐に舐めると、ピチャ、と卑猥な水音がして、外に聞こえるんじゃないかと思うとその先を躊躇してしまう。  そんなことを繰り返していると、平太が少し不機嫌そうな声で言った。 「真空さん、フェラってそうやるんでしたっけ? ちゃんと俺教えましたよね?」  そして後頭部を掴まれ、喉の奥までそれを突っ込まれ、何度もスライドされた。 「んぐぅっ!? んっ、んんぅ!」  生理的な吐き気と圧迫感と、抗い難い快感に、声が抑えられなかった。考える余裕なんてなくて、その場を凌ぐことで精一杯だった。 「ははっ……駄目だ、止まんねえ」  余裕のなさそうな声で平太は笑うと、さらに速度を速めた。もう無理だと俺が首を振っているにも関わらずだ。 「ごふっ……ふぅぅっ……んうぅっ……」  酸素が足りず、頭がクラクラする。  苦しくて早く終われと少し思う一方で、苦痛を強いられているのが堪らなく快感だった。  ふと平太を見ると、平太は満たされたような、それでいて嗜虐心に満ち溢れた瞳で笑っていた。  背筋がブルッと震えた。――ああもう、平太のその顔が大好きだ。 「あー……もうイキそう」  いつもの通り喉の奥に射精されるんだろうなと思っていると、不意にズルッと引き抜かれて戸惑った。  かと思うと、顔に熱いものがかかった。 「あ、はぅっ……」  それが精液だと理解した瞬間、堪らなく被支配欲が満たされ、ゾクゾクッと快感が走る。気付いたら、達していた。

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