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6やっぱり誤魔化せない
平太はくすりと笑うと、
「ははっ、手にすげえ付いた。……いいんですか、こんなとこで思い切りイッちゃって?」
と冷たく問いかけた。
そして手を俺の前に持ってきて、有無を言わせぬ口調で言った。
「舐めて下さい」
自分の精液がついていると考えると嫌悪感があったが、逆らわずに指を咥えた。
「んふ……んっ……」
舐めると、水音がするのと同時に、息をするたびにそう吐息が漏れる音がした。
確認するように平太を見上げると、平太は底冷えするような、それでいて嗜虐心を宿らせた瞳で俺を見ていた。
俺はその瞳に、思わず興奮してしまった。……平太のその目、最高だ。
やがて「いいですよ」と言われ咥えるのを止めると、平太はその指で俺の顔についた精液を拭った。
濡れた感触が伝わり、つい身動ぎしてしまう。
あらかた指で拭い終わると、平太はまたその指を差し出した。
平太は指を舐めさせるのが好きなのだろうか。
そんなことを思いながらまた咥えると、視線の意味を悟ったのか、平太はこう言った。
「指舐めさせるのが好きみたいです、俺。何だか真空さんが犬に見えるからいいんですよね」
そして、悪戯っぽい顔で問いかけた。
「でも、真空さんだって犬みたいに指を舐めさせられるの、好きですよね?」
そのまま、指を喉の奥まで押し込まれる。
「んうぅっ……!」
高い声が思わず漏れた。平太はそれを聞いて、満足そうに笑んだ。
――その時、聞こえるはずのない音が聞こえた。
つまり、「ガチャ」という鍵を差し込む音が。
「……まさか兄貴っ……」
引きつった顔で平太が呟く。
――扉の先に現れたのは、案の定平太のお兄さんらしき人だった。
彼は平太をややつり目にしたような顔立ちだった。
平太の話から相当チャラい外見をしているのかと思いきや、爽やかな外見だった。しかし小物などにしっかり気を遣っており、垢抜けていた。
安直な言い方をすれば、爽やか系イケメン、となるだろうか。
彼は扉を開け、たっぷり数秒は固まった。そして、
「へぇ?」
優男然としたその顔を、さも意地悪そうに歪めた。
「あっ……兄貴、今日合コンじゃ……ッ?」
平太は上ずった声で尋ねるが、彼はさらりと告げた。
「相手の女の子の中に元カノがいるの知ってさ、断ってきた。それより……」
平太は気付いたように、急いで俺の口から指を引き抜くが、もう遅い。
彼は扉を後ろ手で閉め、問い詰めるように笑った。
「今、どんなプレイしてた?」
俺はこの時、平太のドSさのルーツを悟った。……兄貴がこれだからこうなったのか。
「えっ? えっと、その……」
「もったいぶらずに教えて? 今後の参考にしたいしさ」
狼狽えるように平太は口ごもるが、彼は追い詰めるように一歩距離を縮めた。
しかし平太が答えないので、今度は俺の眼の前にしゃがんで尋ねた。
「じゃあこの子に聞こうかな。今、どんなプレイしてた?」
戸惑って、思わず平太を見上げると、平太は苦い顔で首を振った。彼は答えるまで勘弁はしない、と言いたいのだろうか。
言うと思うと恥ずかしくて、きっと今顔は真っ赤になっているだろう。
「その……手コキされて、俺が出した精液を、舐めさせられてました」
何とか言い切ると、彼はふき出した。
「あっははははっ! 平太ぁ、俺のこと今まで散々馬鹿にしてたけど、お前も結構エグいことしてるな!」
「で? 他に何かさせられたの?」
彼は楽しそうに問いかける。
「えっと……イラマチオを」
小さい声で答えると、途端に彼は顔を真っ赤にして笑い転げた。
「くくっ……っははははっ! お前、俺に前何て言ったっけ? 『相手の口の中に無理やりチンポ突っ込んで楽しむとか人間のクズ』、だっけ?」
平太は「だから嫌だったんだよ……」と吐き捨てた。
「で、されてどうだった? 苦しかった? それとも」
意地の悪そうな笑顔を浮かべて問う彼に、俺は正直に小声で答えた。
「き、気持ち良かった、です」
すると彼は動きを止め、ぼそっと呟いた。
「お前に先越された。この子調教済み?」
調教という言葉に顔を赤くしていると、平太は「元々こう」と答えた。
彼は表情を明るくすると、
「平太、いい?」
と謎の問いかけをした。
「は? 絶対嫌だ」
平太はそれに、また謎の答えを返した。
「いいじゃーん、今まで散々俺のオンナ使ってきたろ?」
「あれは誘われたから仕方なく。むしろ俺は被害者だ」
「だとしても平太、俺のおかげで経験豊富になれただろ? だったら一回くらい味見させてくれても」
「望んで経験豊富になった訳じゃねえよクソ兄貴」
まさか俺のことについて話しているのか、と思い至ると、それを裏付けするように平太は彼の胸ぐらを掴み上げ、脅した。
「真空さんに手ェ出したら、そのチンポ切り取って捨ててやるからな、兄貴」
俺のことで怒ってくれている、そのことが嬉しくて、心臓が高鳴った。
彼は「はーいはい」と肩を竦めると、俺の耳元に顔を近付けて、あることを囁いた。
思わず聞き返すと、彼は再度囁いた。
「真空君、だっけ? 君さ――」
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