58 / 373
12やっぱり誤魔化せない
「イッたら駄目だって言いましたよね? 俺」
真空さんが我慢できる訳がないのは分かっていたので、別に怒ってはいなかったのだが、あえてそう怒ってみせた。
冷たく睨むと、真空さんは顔を青ざめさせて謝った。
「お仕置きしなきゃ、ですよね?」
それを聞くと真空さんは、怖がるように、そして期待するようにビクッと震えた。
「お仕置きを期待するなんて悪い子ですね」
そう言いながら、イッたばかりであまり萎えていない真空さんのモノに触れ、手加減せずに亀頭ばかりを扱き始めた。
「えっあ、イッたばっか……っひぃ、あっ」
戸惑う様子を見せたあと、真空さんは苦しそうに眉をひそめ、ビクビクと震えた。
そりゃそうだろう、イッたばかりなのに容赦なく触られたら、刺激が強過ぎて苦痛でしかない。
「やめっ……ひうぅ……」
辛そうな真空さんの声にゾクゾクする。もっとこんな声を聞きたいと思う。
「苦しいですか?」
聞くと、がくがくと頷いた。が、俺は決してやめなかった。
「お仕置きだからなぁ、苦しくなきゃ意味ないですよ」
真空さんは許しを請うように俺を見上げたが、そんな顔、ますます俺を煽るだけだ。
そんな顔をされればされるほど、もっと苛めてあげたいという欲求が湧き上がる。
真空さんは薄っすら涙を浮かべ、いやいやをするように首を振り続けた。
が、少し後に
「やっ……何か、出そぉ……」
と呟いた。
実は、イッた直後に亀頭を責め続けると男でも潮を吹く、ということを知り、冗談半分で試してみたかっただけだったのだが……これは本当にいけるかもしれない。
「へぇ、出してもいいですよ?」
もっと強く擦ると、真空さんはさらに声を上げた。
「待っ……何か、出るぅぅっ! やらぁっ、あぁぅっ!」
辛そうな声をずっと上げながら身悶えていた真空さんだったが、ある瞬間、
「ああっあ、ああああああんんッ!」
と大袈裟なほどの声を上げ、勢いよく透明の液体を噴いた。
その情けない姿に嗜虐心が思い切り満たされて、快楽が脳天を貫いた。
「本当に潮を噴くとは思わなかった……可愛かったですよ」
そう囁いて額にキスしたが、真空さんは息も絶え絶えな様子で、快楽に溺れて返事がまともにできないようだった。
しばらくして、真空さんが落ち着いてきた頃に問いかけた。
「そんなに気持ち良かったですか?」
真空さんは頷いた。その表情はもうすっかり満足気だった。
――しかし、真空さんは大事なことを一つ忘れている。
「でも真空さん、一つ忘れてません?」
聞いても真空さんはピンとこないようで、首を傾げた。
なので俺は、きっと今の真空さんにとっては残酷な事実を告げた。
「今日まだ一回も、本番してないんですよ」
真空さんはたっぷり数秒は惚けてから、目を剥いた。そして、慄いたように問うた。
「まさか、今から……」
「はい、しっかり犯してあげますよ」
真空さんは「無理!」と首を振ったが、俺は脅すように耳元で囁いた。
「自分だけ気持ち良くなってご主人様は無視ですか? 犬失格ですね」
すると真空さんは口ごもり、譲歩するように呟いた。
「せめて、少し休ませて……」
「もうさっき十分休んだじゃないですか」
そして俺は、真空さんの目を見つめて冷笑した。
「犬に拒否権があるとでも?」
真空さんは本当に俺の目が好きなのだろう、さっきまで慄いたような表情だったのに、途端に陶然とした表情になった。
「ないです……」
俺は真空さんの髪を撫で、くすりと笑った。
「いい子だ」
ともだちにシェアしよう!