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6遊園地とクレープと
どうしよう、と俺は心の中で呟いた。さっきの行為のせいで、下半身が熱を持って疼いているのだ。触れたくて堪らないのに周りの目があって触れられず、もどかしさに悶えた。
観覧車の順番待ちをしながら、平太が囁いた。
「どうしました?」
わざとらしい問いと下半身に注がれる蔑むような視線に、体が震える。恥ずかしくて俯きながら、俺は弱く呟いた。
「さっきの口移しに、興奮して……」
「興奮して?」
平太の視線が責め立てる。恐々と平太の目を見ると、案の定平太は冷ややかに俺を見つめていた。走る快感に声が出そうになって、俺は唇を噛み締めた。
「……勃起、しましたぁ……」
へえ、と平太は薄く笑顔を浮かべると、吐息交じりに耳元で言った。
「呆れるほど変態ですね」
「んっ……」
罵られて、微かに嬌声が漏れる。慌てて口元を押さえながら、自分の変態ぶりに少し辟易した。
「人がたくさんいるのに、罵られて喘いじゃって。本当どうしようもないですね」
痛いほどに勃起してしまい、俺は必死に前を隠した。触りたい。触りたくて堪らない。
「色んな人が見てる中で扱いてあげましょうか? そうしたらきっと、周りの人は真空さんに注目するでしょうね。いや、気持ち悪がられるかもしれませんね」
嘲るように平太が囁く。想像してしまって、息を荒げてしまう。
そんな俺を平太は鼻で笑い、バッグで俺の前を隠すように持つと、唐突に俺の下半身を撫でた。
「……っ」
体が跳ねる。声は唇を噛み締めて何とか堪えた。
驚いて平太を見上げると平太は、凍りついた冷ややかな、けれど嗜虐的な熱も同時に持った瞳で俺を見ていた。快感が体を貫く。平太にその目で見られたら、理性なんてどこかへ行ってしまう。
ねだるように平太を見ると、「口で言って下さい」と囁かれた。服の裾を握り、俺は囁き返した。
「触って……俺のチンポ、触って、下さい」
「よく言えました」
笑いを含んだ声で答える平太。
すると平太は焦らすようにやわやわと撫で、かと思うと潰すように握ってきたりした。
「んっ……んんっん……んぅぅ」
どれだけ抑えても、声は微かに漏れていく。快感と背徳感に耐え切れず、僅かに腰を揺らしてしまう。
「声、漏れてますよ」
俺自身も分かっていることを、平太はあえて口にした。平太は相変わらず楽しげで嗜虐的な笑顔だった。
耐えられない。気持ち良くて耐えられない。このままめちゃくちゃに犯してほしい。周りの人にバレたらいけないと分かっているのに、その背徳感すら快感に変わる。
周りの人は気付かずに、各々の観覧車の待ち方をしていた。相当おかしな行動を取らない限り、人というのは案外他人のことを気に留めない。それは分かっているのに、それでも周りの目が気になって仕方がなかった。
「この調子だと、待ち時間はあと十分くらいでしょうね」
何気ない会話を装って平太が言う。十分もこの状態で耐えられるだろうか。俺の心の内を悟ったか、平太はにやりと笑った。その目付きに下半身がじんと疼いた。
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