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3好きって言うだけ

 この人は、どこまで可愛い姿を晒せば気が済むのか。  ちゃんと勃つんだったら抱くんだけど、ともどかしく思った。回復したとはいえ体は弱っているようで、精力もまだ弱っていて勃たなかった。 「謝らなくていいですから真空さん、腕どけてください」  真空さんは迷うように視線を彷徨わせたが、そろそろと腕を退けた。案の定ソレは、服の上から分かるくらい張り詰めていた。 「あれ、勝手な妄想話してたら勃っちゃったんですか?」俺はソレに足を置き、何度か軽く踏んだ。「気持ち悪いですね」 「あ、ぁあ、ああぅ」  踏むたびに真空さんは、我慢できないようで甘い吐息を漏らした。 「体が疼いて我慢できないでしょう、真空さん」  言うと、真空さんは顔を上げた。俺と目が合うと、途端に蕩けた瞳になった。 「いいですよ、好きなだけここで慰めて」  意外だったようで、真空さんは戸惑うような表情になった。  しかし俺が黙って見つめ続けると、またさっきまでの欲情した顔になっていった。  やがて理性が欲望に勝ったようで、ベルトを開けズボンを下ろし始めた。真空さんは確認するように俺の顔を見上げ、すぐに目を逸らして慰め始めた。 「あぁ……ん、あっ……はぁ……」  控えめな声を出す真空さん。 「いつもそういう風にシてるんですか? シてる時って何考えてます?」  さらに息が荒くなった。「あ……ご主人様の、ことです……」真空さんは吐息混じりに色っぽく答えた。 「真空さん、乳首も触って見せてください。空いてる方の手でシャツのボタンを開けて」  逡巡するように少しの間手を止めたが、真空さんが俺に逆らえるはずもなかった。  言う通り、扱きながら空いてる方の手でシャツのボタンを開け始めた。利き手ではないからか、手つきはたどたどしかった。  やがて、控えめに乳首を触り始めた。でもその光景だけでは足りなくなって、俺はさらに指示した。 「もっと強く。抓るみたいに強く弄ってください」  真空さんは、今度は躊躇わずに強く弄り始めた。真空さんの体が震えた。 「ああぁぁ……ああ……んんっ、ちくびぃ……きもち、いいですぅ……」  俺も息が荒くなる。どくどくと鳴る心臓が止まらない。 「思いっ切り抓って」と言うと、直後に真空さんはギュ、と抓った。真空さんの体が「はあぁっ」と大きく震える。 「抓ったまま、動かしてください。扱く手は止めないで」  真空さんは言われた通りに動かした。快感が強いのか、無理、と言うように首を振り始めた。 「んああっ、あっ、あふぅ……やだぁ、ご主人、様、イキそうぅ……きもちいっ、んんっ……」  真空さんが快感に眉を寄せ、体を震わせた。  イキそうになった時を見計らって俺は、「手を止めてください」と言った。真空さんは言われた通りに手を止めたが、欲情し切っていて物欲しそうだった。焦らすなと顔が言っていた。  その顔が見たかった。快感に喘ぐ顔もよかったが、快感を欲しがる顔も見たかった。  真空さんは早く快感が欲しいと目で訴えかける。――堪らない。  その時だった。不意にドアが開いたのは。

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