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10好きって言うだけ

「誠人、深く息吸え。もうちょっとだから」  言われて初めて、息が浅く早くなっていることに気付いた。落ち着けるようにゆっくりと呼吸すると、千紘は一気に挿れた。 「あ、あっ……!」  前立腺が千紘ので一気に擦れる感覚に、俺は体を震わせた。  千紘は一度大きく息を吐くと、俺の頭を撫でて呟いた。 「誠人、全部入った」  ぽつりと呟くと、千紘は噛みしめるようにこう囁いた。 「本当に入ってる……誠人の中に、俺のが……」  それを聞いて、ああ俺は千紘に抱かれてるんだなと再認識した。次いで――どうにも抑えが効かないくらいの幸せがこみ上げてきた。  充実感というのか、胸にじわっと暖かくて優しいものが広がった。今までは快楽だけを追求してきたから、こんな気持ちは初めてだった。  千紘を見上げると、千紘は少し涙目だった。ちょっと呆れて、でもすごく愛しくて、俺も髪を撫で返して笑った。 「千紘、泣きそう?」 「ああ、泣きそう」  千紘は頷いて、俺と同じように笑い返した。その笑顔はすごく綺麗だった。 「動いていいか?」  いいよ、と答えると、千紘はゆっくり抜いて、ゆっくり挿れて、を繰り返した。 「はぁっ……ん、んっ……」  抑えて抑えて、それでも声が漏れてしまう。恥ずかしく感じたけれど、その度に千紘が可愛いと言うので、悪くないかと思った。 「ねえ、千紘っ……んっ、好きに、動いて……っあ、良い、からっ……」  俺のことを気遣ってか、緩やかに動く千紘に言うと、千紘は首を振った。 「いや……誠人初めてだし」 「そんな、動きじゃっ……いつまで、経っても、う、んんっ……イケない、でしょ……」  千紘は、まあ、と決まり悪そうに答えた。だから俺は、こう言った。 「好きに、してよ……っ、お、れっ、千紘が、俺でっ、乱れんの……見たい、から」  千紘は少し驚いたように目を見開き、後悔すんなよ、と囁いて、打って変わって激しい抽送を始めた。 「ぅ、ああっ! 待って、こんなっ……激しいなんて、聞いてなっ……う、ううっん、んんっ……!」  さっきとは全く違う、もう無理だと腰を引きたくなるくらいに強い快感が、波のように俺を襲う。 「お前が煽ったんだからな……もう、我慢できねえ」  荒く息を吐きながら、甘く掠れた声で囁く千紘。囁かれた耳からも、弱い電気のような快感が走った。 「誠人っ……好き、愛してる……っ、好きだよ、誠人ぉ……」  千紘は何度も、好きだの愛してるだのと囁く。全身で目一杯、千紘の愛を受け止めてるようだった。胸が詰まるくらい、幸せを感じた。 「千紘っ……俺も、好きぃ……」    体がガクガク震え、声が抑えられなくなるくらい、気持ち良かった。今までで一番満たされていて、気持ち良いセックスだった。 「誠人……俺、イキそうっ……」  快感に眉を寄せ、切なげな声色で千紘が言う。 「一緒、にっ……あ、ああっ! イ、こ……? んあ、あっ……」  千紘は頷いた。そしてさらに激しく動いた。 「んんっ……あっあっあ、イクっ……!」  理性が全部吹っ飛んで、襲い来る快楽に耐え切れず、千紘にしがみついて達した。千紘も「んっ……」と僅かに声を上げると、一緒に達した。  そして、中に温かいものが広がる。同じように、満足感も全身に広がった。

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